7月22日(金曜日)に、著書『デフレの正体』、『里山資本主義』などでヒットを飛ばしておられる藻谷浩介(もたに こうすけ)さんと対談をさせていただきました。約300人の聴衆を前にしての対談でした。基本的な認識は一致していますし、お互いにファクト(事実)を重視して物事を見るということについても極めて類似しています。したがって、討論番組の「テレビタックル」的な大論争ではなく、私も藻谷さんもやたらと図や数字を出し合う対談になりました。次から次に図や数字が出てきましたので、居眠りをしている人はほとんどいなかったようです。

対談の中でとても刺激を受けたことが一つありました。それは、面積で物事を捉えるという考え方です。物事を見る上でグロスとしての数字や一人当たりの数字などで表すことは多いと思いますが、首都圏など人口が集中している地域の実態は1人当たりの数字では表しにくいということを藻谷さんは指摘されていました。例えば、埼玉県の全体のGDPは約20兆円ですけれども、その中には、実は都内で働いている約84万人の方々の分が入っていません。その人たちの働きは東京都のGDPに加算されてしまうことから、当然、1人当たりのGDPは埼玉県は少なくなり、東京都は多くなる。これは神奈川県や千葉県についても言えることです。同じように、1人当たりの県民所得で見ても、埼玉県が全国19位になったり、神奈川県が16位になったりします。

藻谷さんは、見方を変えて、面積当たりで経済の数字を見るようにしているとのことでした。例えば、埼玉県の農業産出額は全国17位ですが、県土面積で割った単位面積当たりの算出額は何と全国5位になるわけです。農業産出額そのものは北海道が1兆1000億円を超えているところに、茨城県、鹿児島県、千葉県が4000億円台で続いています。しかし、北海道は面積が広いので面積当たりにすると39位になります。逆に、埼玉県は面積当たりで見ると5位ということですので、付加価値の高いものを作っている、単価が高いものを作っているということになるのかもしれません。
同じように、工業出荷額では埼玉県は全国7位ですが、面積当たりにすると5位になりますので、これも付加価値が高いものを作っているということの証拠になるわけであります。

こうした新しい見方を藻谷さんから学ぶことができました。とにかく物事は様々な角度から見なければならないということを改めて考えたところでした。