「今夏のリオ・オリンピックを経て、いよいよ2020年の東京オリンピック開催へのカウントダウンが始まります。前回の1964年の東京オリンピックが世界に示したメッセージは日本の高度経済成長の時代の到来です。開催日に向けて、日本の経済成長を支える社会インフラが次々と築かれ、例えば新幹線のように高速で大量に人々を移動できる交通網などが日本社会の効率性と生産性を高めました。」と、私の知人である渋澤健(しぶさわ けん)さんが定期的に送ってくださる「渋澤レター」に書いておられました。
一方、2020年のオリンピックで発信すべきメッセージは何であろうかということについて、渋澤さんは「成長の持続性」ではないかと言っておられます。「これからの課題は、過去の成功体験の延長だけで解決することはできない」とも言っておられます。
過去の成功体験を一言で表せば、それはモノを所有する価値観だそうです。経済成長を通じてモノが乏しい時代から脱出し、車や一戸建ての家などのモノを次々と手に入れることで私たちは幸福感を得てきました。
これが現在のようにモノがあふれた時代になると、モノの使い捨ても当たり前になり、物欲だけでは幸福感が満たされなくなる意識が社会に広がっているという意味では、近年目立ち始めてきたカーシェアやルームシェアなど「シェアリング・エコノミー」という社会現象が面白いとも渋澤さんは言っておられます。
モノを所有する幸福感と経済成長の成功体験を持つ世代にはなじみにくい価値観かもしれませんが、「共有する」ことに対して若手世代はさほど抵抗がなく、むしろ合理的と感じているようです。正に2020年に向けた一つのテーマがそこに見えるような気がします。
地球の資源が有限である一方、人間の欲求は無限であることの矛盾を解消するための仕掛けを何らかの形で考えていかなければならない、そういう意味で人間社会の持続可能性を追求する何かが必要であると思います。それが何であるかを2020年の東京オリンピック・パラリンピックで上手くアピールできれば、正に日本のレガシーとも言うべきものになるのかもしれません。
まだまだ見えない部分が多くありますが、そうしたところにヒントがあるようです。埼玉県もバスケットボール、サッカー、ゴルフ、射撃の競技会場となっています。また、2019年のラグビーワールドカップの会場でもあります。新しい時代の新しい価値観を何らかの形でアピールできるように努力したいと考えております。