いよいよ5月1日(水曜日)に新天皇が即位され、「令和(れいわ)」時代が始まります。
「令和」は、『万葉集』の「梅花(うめのはな)の歌」から引用されました。元号の典拠(てんきょ)がこれまでの中国古典(漢書)ではなく、初めて日本古典(国書)となったことも話題になりました。

実は、本県の県名も『万葉集』にゆかりがあるのは御存じでしょうか。『万葉集』には「埼玉(さきたま)」の地名を詠んだ歌が2首あり、時を経て埼玉県の県名となったともいわれています。

その2首を紹介します。なお、訳文は、『万葉集 全訳注原文付』(中西進 校注 講談社)によっています。

埼玉の津に居る船の 風を疾み綱は絶ゆとも 言な絶えそね(巻十四収録)
(さきたまのつにをるふねの かぜをいたみつなはたゆとも ことなたえそね)
【訳】埼玉の湊(みなと)に泊る船のように、風が強くて綱が切れてしまっても、愛のことばだけは絶えないでほしい。
【歌碑】行田市 前玉(さきたま)神社、小埼沼(おさきぬま)県指定記念物 旧跡

埼玉の小埼の沼に鴨そ翼切る 己が尾に降り置ける霜を掃ふとにあらし(巻九収録)
(さきたまのをさきのぬまにかもそはねきる おのがおにふりおけるしもをはらふとにあらし)
【訳】埼玉の小埼の沼に鴨が羽をふるわせている。わが尾に降りおいた霜を払おうとしているらしい。
【歌碑】行田市 前玉(さきたま)神社、小埼沼(おさきぬま)、さいたま市岩槻区個人宅内

これらの歌からは、古代埼玉の地で暮らしていた人々の熱い情熱や当時の原風景を感じることができます。

県内の万葉歌碑にある万葉歌についてもっと知りたい方は、さいたま文学館(桶川市)に行かれてはいかがでしょうか。「埼玉(さきたま)」の地名を詠んだ2首を含んだ10首を、パネルで常設展示しています。

また、埼玉県立文書館(さいたま市浦和区)では、『万葉集』の江戸時代の版本を直接手に取って閲覧することができます。

映画「翔んで埼玉」の大ヒットにより、少々ディスられてもびくともしない埼玉県の懐の深さが注目されていますが、その歴史も非常に深いものがあります。
令和時代のスタートに当たり、古代の埼玉を『万葉集』から感じてみてはいかがでしょうか。

さいたま文学館(外部サイト)
(休館日:月曜日 ただし、4月29日、5月6日は開館、5月7日(火曜日)は休館)
埼玉県立文書館(外部サイト)
(休館日:月曜日、国民の祝日・休日、月末日
大型連休中は4月27日(土曜日)、28日(日曜日)は開館、4月29日(月曜日)から5月6日(月曜日)は休館)