8月27日(月曜日)のブログで、デジタル・エコノミー関係企業の株式時価総額の話をさせていただきました。「GAFA(ガーファ)+M」と呼ばれるアメリカのITプラットフォーマー5社の株式時価総額が合計400兆円を超え、中国のIT大手2社の合計額も約100兆円となっている一方で、日本の東証一部上位5社の合計額は約60兆円であり、大きく水をあけられているというものです。

株式時価総額は発行済株式の時価を積み上げた数字で、株式市場の評価に基づく企業価値を表す指標です。
世界の経済が第4次産業革命とまでいわれるほどデジタル産業にシフトしている状況について真剣に考える必要があります。GDPが社会における全ての価値を表すものでないのと同様に、企業の本当の価値は、この株式時価総額だけで判断されるものでもありません。

「会社四季報」の2018年3集によると、ディズニーランドを運営する株式会社オリエンタルランドの株式時価総額は4兆824億円。鉄鋼メーカー最大手の新日鐵住金株式会社の2兆2,432億円の約1.8倍にもなります。
企業の利益や資産、将来の成長に対する市場の評価が、かつて「鉄は国家なり」と言われ、正に日本を代表する企業であった新日鐵と住友金属が合体した新日鐵住金よりも、今やオリエンタルランドの方が上回っている状況です。

しかし、企業もまた社会的存在であるとの視点から、企業活動が社会経済全体に及ぼす経済波及効果で見ると、違う側面が見えてきます。
公表されているデータを基に、需要増加額や直接の生産活動による効果、原材料購入による効果、所得増に伴う消費増による効果などの経済波及効果を試算してみたところ、オリエンタルランドが約1兆円であるのに対して新日鐵住金は約21兆円でした。
「産業のコメ」ともいわれ、様々な産業になくてはならない鉄鋼業の面目躍如といったところです。
では、オリエンタルランドは社会にさほど波及効果をもたらしていないかというと、それも違います。ディズニーランドには、夢を求めて日本中のみならず世界中から多くの観光客が訪れ楽しい時間を過ごします。経済波及効果というお金の価値に換算されない、いわば人々に幸福感を与えることで社会経済への貢献をしています。

利益の追及と社会の一員としての役割。私たちはこの両面から企業を見ていく必要があると思います。