4月2日(月曜日)に行った県の新規採用職員就任式の訓示の中で、私は「情」と「理」の大事さを新規採用職員の皆さんにお話しさせていただきました。同時に、私が尊敬する前県立大学理事長でありました江利川 毅(えりかわ たけし)さんが以前話されていた「義」と「恕」の考え方についても紹介させていただきました。

まず、「義」と「恕」についてです。これは公務員としての心構えの話です。
公務員は正義にかなったことをしなければならないのは当然です。しかし、そこには「恕」、つまり人としての思いやり、愛情、心配りが必要だということを江利川さんは説かれています。

私もこれまで、言葉は少し違いますが、「情」と「理」の大切さを訴えてきました。つまり、法律、条例や規則など法理にのっとり仕事をしなければならないが、そこには人としての情け、人情というものがないといけないということです。
例えば、県民の方から何らかの訴えがあったとき、「その内容はとても共感できる。また、言っていることも理にかなっている。正しい。」と感じても、法律的に、条例的に、規則的にできない場合があります。しかし、だからといって、最初から相手にしなかったり、安易に退けたりするのは公務員のあるべき姿ではないと思います。

自然の摂理や世の中の常識に合わせて共感できれば、それが正しい一面を持っているのは事実です。一方、法律や条例などは事が起きてから作られたり、又は改正されたりするため、世の中の変化から常に遅れることになります。このタイムラグを正に「恕」とか「情」でカバーするような工夫をしなければならないと考えています。

何か違う方法があるのではないか、それはできなくとも少しは状況を改善するアイデアがあるのではないかといったことを考えることが大切です。確かに、そういう工夫は新人の職員には難しいかも知れません。場合によっては、上司や同僚などに相談されればいい答えが見つかるかもしれません。「一日だけ、お時間をください。」と言って、改めて上司などと相談をして何か良い解決方法を考えるようにすることを私は日頃から職員に提案しております。

就任式では、ほかにも様々な話をさせていただきましたが、公務員の心構えということに関してはこのことに尽きると思っています。