『デフレの正体』、『里山資本主義』などの著作で有名な藻谷浩介(もたに こうすけ)さんと対談する機会がありました。藻谷さんは日本全国を歩き、地域の特色を生かすべく提言をされています。その藻谷さんから見た埼玉を語っていただきました。

古来、成功の条件は「天の時、地の利、人の和」と言われますが、埼玉は正に「地の利」のある所であるとのお話がありました。

そもそも、大宮の氷川神社は埼玉や東京に200社以上ある氷川神社の総本社であり、武蔵一宮と言われています。藻谷さんは、大宮という地名が出雲大社と同じように大いなる宮が存在する、いにしえからの中心的な土地を示すと説かれました。また、中世から江戸期に入るまで関東における主要都市と言えば、上杉氏の川越、成田氏の忍(おし、現在の行田)、太田道灌(どうかん)ゆかりの岩槻などでした。このように、埼玉は地政学的に優位な位置にあり、現在の埼玉の活力はもともとの関東の中心という復元力が働いている表れであると言われました。

かつて日本が「世界の工場」と言われた時代は港湾が重要で、コンテナ取扱個数の世界ランキングは、1980年では東京港が18位、横浜港が13位、神戸港が4位でした。それが、2014年ではそれぞれ28位、48位、56位です。経済が内需型に移行し陸上輸送が中心となった我が国において、圏央道、東京外かく環状道路、関越道、東北道、常磐道を持つ埼玉は、圧倒的な優位性を持つということにも触れておられました。

事実、2003年から2013年までの10年間の県内総生産の増加額は愛知県に次いで全国2位、企業本社の転入超過数は直近10年間で全国1位であることなど、埼玉が持つ地政学上の優位性が復元していると言っていいかもしれません。

藻谷さんの鋭い視点の中で特に驚いたのは面積当たりの経済指標です。例えば、北海道の農業産出額は1兆1,000億円を超えダントツの全国1位です。埼玉県は1,900億円の17位に過ぎませんが、面積当たりで見れば埼玉県は全国5位、北海道は39位になります。言われてみれば、埼玉県の農業が付加価値の高い農産物を作っていることは事実です。

様々な切り口で物事を見なければならないことを改めて藻谷さんから学びました。