昨日、1970年代以降に生まれた人たちは消費水準が低いということをお伝えしました。そこで今回は、「労働市場には改革が必要」というお話をさせていただきます。

近年、有効求人倍率がバブル期並みに回復するなど、労働需給は引き締まっています。新規求人数を産業別に見ると、社会の高齢化を背景とする圧倒的なニーズの高さから、「医療・福祉」は極めて大きな伸びとなっております。一方、「製造業」はリーマンショック以来大きく伸びることもなく、「建設業」も基本的には下げ止まり、「飲食・宿泊」は微増、「卸売・小売」が多少高いという状況です。

興味深いのは、生産年齢人口が1997年の8,700万人から2015年には7,700万人に減少しているにもかかわらず、労働力人口は2013年から緩やかな増加に転じていることです。その背景には、人口の3分の1を占める高齢者や、女性の労働参加率の上昇があるようです。

まさに、私がよく言うところの「生産年齢人口の減少は、高齢者と女性でカバーする以外に方法がない」ということが、もう既に2013年ぐらいから現象として緩やかに現れてきています。

問題は、就業者数が増えているとはいえ、パートなどの短時間労働者の割合が増えているため、マクロの労働供給量は減少していることです。さらに、短時間労働者は一般の労働者に比べてスキルアップの機会が少ないため、生産性の低い労働者が増えているということもいえます。

事実、かつては世界1位であった日本の競争力は、2016年現在では世界26位になっています(IMD世界競争力調査)。そして、その背景には、2013年ぐらいからほとんど伸びていない日本の労働生産性の低さがあります。

今回の景気回復の特徴は、就業者数の伸びに比べてGDPの成長率が極めて低いという点です。この原因も、労働生産性の伸びの低さによるといっても過言ではありません。

アベノミクスで言うところの「第3の矢」である「成長戦略」が功を奏していないのです。つまり、構造改革などがほとんど進んでいないということに尽きます。

労働市場の面から見れば、引き続き女性や高齢者の労働参画が必要ですが、今後はそれに加え、労働生産性を向上させるための労働力移転も重要になってきます。スキルを高める職業訓練などにより一般労働者を積極的に育てることこそ、企業の成長の早道だと言えるのかもしれません。

短時間労働者を多用することで、当面の利潤を上げることは可能かもしれませんが、企業としての長期的な成長は望めないとも言えるのではないでしょうか。