10月17日(土曜日)に大宮ソニックシティで開催された、アニメと観光をテーマとするイベント「アニ玉祭」の開催行事に出席した後、急いで大宮駅から羽田空港に向かいました。読売新聞社の北海道支社が中心になり、札幌テレビ放送などが共催をして開催された「北海道新幹線知事フォーラム」に出席するためでした。パネリストは、高橋はるみ(たかはし はるみ)北海道知事、達増拓也(たっそ たくや)岩手県知事、村井嘉浩(むらい よしひろ)宮城県知事、福田富一(ふくだ とみかず)栃木県知事、そして私、上田の5人でした。来年3月26日に予定されている北海道新幹線(新青森・新函館北斗間)の開業がどのようなインパクトをもたらすかがテーマで、コーディネーターは読売新聞東京本社特別編集委員の橋本五郎(はしもと ごろう)さんでした。札幌までは羽田経由でも片道4時間半ぐらい掛かりますので、日程上なかなか厳しいこともあり、お断りしていたところですが、主催者の熱心なアプローチに負けて出席することになりました。
ちなみに、大宮駅を起点にすると羽田空港に着くまでに70分は必要です。実はこの70分の間に新幹線を使えば仙台駅まで行くことができます。そして、飛行機の場合は概ね20分前までには搭乗手続きを行う必要があるので、一般的に30分前には空港に到着しておく努力をします。その30分の時間で実は仙台駅から盛岡駅の近くまで行ってしまいます。さらに、空港の発着では15分から20分遅れることがありますので、新幹線のダイヤに合わせれば、羽田空港から北海道行きの飛行機が飛び立つ頃には新青森駅に近づいているということが計算上は成り立ちます。
そもそも、私たちが大宮から北海道の札幌に到着するまでの時間を見積もる場合、フライト時間そのものは1時間半ですが、実際はトータルとして3時間半、安全をみると4時間半くらいを見通しておく必要があります。一方、来年3月の開業はまだ新函館北斗駅までですけれども、これが更に札幌まで延伸(平成42年度末予定)した場合の所要時間は4時間半と見込まれているようですので、その差はほとんどなくなります。
こうした時間差がどれだけ世の中を変えるかということです。いろいろなアプローチがありますが、産業の面では、現在、さいたまスーパーアリーナで開催している「彩の国ビジネスアリーナ」があります。これには近隣の都県のほか、北陸新幹線の開業を見越して、数年前から富山県や石川県からも出展あるいは営業に来ておられます。こうしたものに今後は北海道も加わってくるかもしれません。正に陸路を通じたビジネス交流がスタートする可能性があります。
それから観光の面です。岩手県、宮城県、栃木県の知事さんたちは、自分たちは北海道に行くけれども、北海道からはほとんど来ていないというお話をされていました。よく伺うと、北海道は道内が広いこともあり、一般の道民の皆さんが道内から出ることがどうしても少ないそうです。ビジネスマンは札幌・東京間などを頻繁に動いているわけですけれども、道内の人たちが北海道を出て観光する機会は意外に少ないということが統計上も明らかになっています。飛行機で移動しなくてはいけないという課題があることも大きな理由かもしれません。その点、新幹線なら札幌・函館間だけでも、現在、特急で3時間半も掛かっていたものが小一時間に短縮されます。そして札幌から仙台までとか、あるいは大宮まで、東京まで乗り継ぎなく移動ができるというメリットもありますので、観光交流が格段に増えるということが予想されています。
また、こうした新幹線を通じた交流が単に観光とか産業だけではなく、それぞれの地域振興につながる可能性が高いのではないかということも議論になりました。例えば2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、サッカー、バスケットボール、ゴルフ、射撃が本県で行われますが、このうち、サッカーとバスケットボールはさいたま市で行われます。特に、バスケットボールの会場となるさいたまスーパーアリーナなどは、新幹線で降りたらもうすぐというところにあります。そういう意味では、スポーツを通じた街づくりを行っているさいたま市にとってみれば、これまでほとんど視野になかった北海道からの集客が考えられるわけです。
こうした話をしながらも、各県の知事さんたちは、やはり雇用の促進とか人口が減少するのにストップをかけなければならないとか、こういう話を強調されていました。埼玉から本社や工場をこちらに移せないかとか、どちらかというと、私だけが皆さんからいじめられる立場にありました。埼玉にもいろいろ課題はありますが、他の知事さんからは埼玉がなんとなく羨ましがられた北海道での2時間のフォーラムでした。