埼玉県獣医師会の髙橋三男(たかはし みつお)会長から興味深いお話を伺いました。それは人間にとって危険な生物は何かというお話でした。
一年間にどの生物が1番人間を死に至らしめているかというと、何と小さな蚊だそうです。その死者数は約72万人です。2番目は人間です。戦争などの犠牲者の数は約47万人だそうです。以下、3位がヘビ5万人、4位が犬2万5,000人、5位がツェツェバエ2万人、8位が回虫2,500人、9位がサナダムシ2,000人、10位がワニ1,000人と続きます。サメは15位で10人とのことです。日本で恐れられている熊は15位以内にも入っていません。
興味を持って調べたところ、この数字はマイクロソフト社の創業者であるビル・ゲイツ氏のブログに紹介されているようです。WHO(世界保健機関)の統計も確認したところ、人間以外の危険な生物については大きな相違はありません。人間によるものは、その年によって戦争や大紛争があったりなかったりしますので、数字が変動するものと思われます。でも残念ですが2位という順位は動かないようです。ちなみに、米国の国務省の発表では2014年のテロによる犠牲者だけでも3万2,000人に上っています。
さらに、WHOの統計で内戦や紛争の多い国の平均寿命を見ると、アンゴラは52.4歳、ソマリアは55.0歳、南スーダンは57.3歳、アフガニスタンは60.5歳と短くなっています。こうした国では、新生児の死亡率も高く、アンゴラが4.87%、ソマリアが3.97%、南スーダンが3.93%、アフガニスタンが3.55%です。一方、日本の平均寿命(男女)は83.7歳で1位、新生児死亡率は0.09%でイタリア半島にあるサンマリノ(人口約3万2,000人)に次いで低い方から2位になっています。
つまり、紛争などで人間同士が生命の奪い合いをしているような地域では、感染症対策や新生児医療に手が回らず、他の危険生物からも人間の命を守ることができていないのだと思います。人間が人間にとって危険な生物にならないような仕掛けを様々なところに組み込んでいく「人間の英知」が求められていることが分かります。