私は時々いろいろな場で、日本国憲法の条文の中には「権利」に関することが16、「自由」に関することが9ありますが、「義務」に関してはわずか3、すなわち教育の義務、勤労の義務、そして納税の義務しかありませんという話をします。

政治や行政の大きな役割の一つに、国民や企業が納めた税金を再配分することが挙げられます。トヨタ自動車が法人税を多く納めたからといって、トヨタ自動車のために行政が特別にお金を使うことはありません。一方で、納めたくても消費税以外に税金を納めることができない低所得の方には、最低限度の生活を保障するための支出があります。
 ちなみに、国税庁の調査によれば給与所得者の年間の平均給与は420万円です。この所得が世帯所得と仮定すると、納める所得税などの納税額は約20万円で、この他、医療保険や年金保険などの社会保険料が約40万円の計約60万円を負担されています。

一方、小・中学校の運営費などに投入される公費の額を知っている人は少ないと思います。
 保育園などの保育サービスは1年間に園児1人当たり75万円、公立学校では児童生徒1人当たり小学校で74万円、中学校で90万円、高校で98万円、国立大学では学生1人当たり179万円です。また、基礎年金の年額78万円の2分の1の39万円は税金で補充しています。
 この他にも、私立高校の授業料軽減や港湾、道路、橋、公的病院への支出など、挙げれば切りがないほど税金が投入されています。

このように、私たちが受け取る行政サービスは個人として負担する税金の額を上回っています。この差額の多くは企業が負担していますが、それも元をたどれば国民が働いて生み出した価値と言えます。
 ところが最近では、高齢化に伴う社会保障費の増大などで多額の赤字国債を発行せざるを得ない状況です。私たちが受けるサービスの費用を将来の世代にも負担してもらっていることになります。そういう意味では税と社会保障の一体改革は待ったなしと言えます。