国立科学博物館人類史研究グループ長である海部陽介(かいふ ようすけ)氏の著書『日本人はどこから来たのか?』を読みました。遺伝子などの考察から、現生人類が現在の東アフリカのタンザニア辺りで、10万年前もしくは20万年前ぐらいに誕生したことは既に定説化しています。そして5~6万年前からヨーロッパやアジアへと移動し、さらにその後、2万年前ぐらいから北アメリカや南アメリカへと移動したことが遺伝子的あるいは考古学的に証明されて定説化しています。
この人類が日本列島に到達したのは3万8000年前ぐらいではなかろうかと言われていますが、海部氏の著書では日本人が形成されるプロセスの中で、ヒマラヤの南回りと北回りのグループがあって、やがて日本列島で遭遇した可能性があるという説が展開されております。台湾・琉球列島と南方から渡ってきた航海術が得意なグループ、朝鮮半島から対馬を経由したグループ、北海道ルートで入ったグループ、この3グループがあるようだとの分析です。こうした日本人のルーツ探しの分析について大変興味深く拝読しました。
そもそも論からいくと、なぜ人類が東アフリカで誕生したのかということを考えたりもします。例えば、日本であれば川を鮭が上ってくる、あるいは海岸線でワカメや貝や小魚を採ることができる、そして森林ではドングリなどを採ったり、小動物を捕まえたりすることができます。ところが東アフリカのサバンナでは、鮭が上ってくることはあり得ないし、巨大動物と闘うのも大変だったのではないかと思います。
そうした疑問を解決する本を3年ぐらい前に読んだことがあります。『BORN TO RUN』という本です。走るために生まれたという意味の本でありますが、実は哺乳類の中で一番長く走る能力を持っているのは人間なのだそうです。ほとんどの動物は100mを10秒以下で走るのが当たり前で、カバですらも100mを10秒で走ることができますが、ふつう人間はそこまで早く走ることはできません。しかし、人間には長時間走る能力があり、今でもメキシコの高地民族の中には1日に200kmや300km走り抜く人たちがいるそうです。
馬にしても全力で走る時にはとても速いわけですが、ダービーなどを見ていても全力で走った馬は直ぐ息切れをして、続けて走ることができません。つまり、長時間走ることが得意な我々の祖先は、多分、動物をリレー方式で追いかけて、動物が息切れしてよろよろしたところを石でゴツンとやって、それを食べて生きてきたのではないかと思います。上田仮説です。どんなものでしょうか。