「世界の人口の1%を占める富裕層が所有する富の合計は、世界の残り99%の人々が所有する富の合計よりも多くなった。」今年1月、イギリスの飢餓救済団体「オックスファム・インターナショナル」が地球規模で広がる格差の現状を明らかにしましたが、その一端を垣間見る驚くべき事実が判明しました。

中米パナマに拠点を置く法律事務所から流出した資料「パナマ文書」です。タックスヘイブンを使った巨額の課税逃れ、そのリストには企業だけではなく、世界の首脳やその親族なども含まれているといいます。名前を明かされた首脳や各界の指導者たち。辞任に追い込まれた者、弁明に躍起となる者、沈黙する者。その国によって振る舞い方は様々ですが、国際世論の疑惑は深まるばかりです。

「貧しい人とは、少ししか持っていない人のことではなく、際限なく欲しがる人、いくらあっても満足しない人のこと」、これは南米ウルグアイの前大統領、ホセ・ムヒカ氏が、2012年の「国連持続可能な開発会議」で行なったスピーチの一節です。給料の大半を寄付し、自らは農場に暮らす清貧ぶりから、称賛を込めて「世界で一番貧しい大統領」と呼ばれる彼の言葉は、世界中の人に大きな感動を与え、同時に行き過ぎた資本主義と消費社会への警鐘を鳴らしています。

このムヒカ氏の生き方については、いろいろな考え方があるでしょうが、確かに極端な富の格差は社会的摩擦を生み、結果として社会的リスクが高まります。また、格差是正のための行政需要が増し、ゆえに政府は税金を上げざるを得なくなり、それがまたまた税金逃れのためにタックスヘイブンなるものを探して歩く富裕層を増やします。そういう情報を巧みに使う富める者と、貧しき者の格差は、ますます開くばかりになってくるのです。

そこそこの富の格差、一億総中流などと言われる社会こそが、リスクが少なく、摩擦の少ない、それゆえに格差是正や治安維持のためのコストも少ない良い社会ではないかと言われています。日本はかつて、そのモデル的な国だと言われておりましたが、いつの間にやらそうではなくなってきたところに今日の課題があります。何とかしなければと私もいつも思っております。