生活習慣病の一つである糖尿病は、今やがんなどと並ぶ国民病としてよく知られています。糖尿病は多くの場合、遺伝的要因に生活習慣が重なるなどして発症し、進行すると慢性化して目や腎臓などに重篤な合併症を引き起こしたり、脳卒中や心筋梗塞、認知症など、様々な病気を併発する可能性があると言われています。

 生活習慣に由来することが多い病気でありますから、自覚症状が出にくく、気づいた時には重症化してしまっているということが大きな問題になっています。患者数は日本全国で確実に増えており、平成25年には埼玉県でも通院している人が21万2千人、通院していない人が10万6千人、合計で31万8千人の患者がいると言われています。また、糖尿病により腎機能が低下し、人工透析となると、透析前は年間50万円程度で済んでいた医療費が、約500万円と10倍に跳ね上がります。健康の問題だけでなく医療費についても大変大きな影響があります。

 埼玉県では、平成24年度から「健康長寿埼玉プロジェクト」を推進して、県民の健康づくりと医療費の抑制に取り組んでいますが、そのスペシャル版として、平成26年からはデータを活用した糖尿病の重症化予防にも取り組んでいます。埼玉県医師会や埼玉県国民健康保険団体連合会などと協力して、平成26年10月から19市町で取組を始め、27年度は30市町に広げています。28年度には全63市町村で展開できるよう普及を図っています。

 その内容ですが、まず40歳以上の方が対象となる特定健診(メタボ健診)やレセプト(医療機関が市町村等に請求する診療報酬の明細書)のデータを分析して、血糖値の高いハイリスク者をピンポイントで抽出し、保健師等が電話によって重症化リスクをしっかり伝達します。レセプトにより医療機関を受診しているかどうかを確認して、受診していない人には直接働き掛けて確実な受診につなげます。通院している人についても、かかりつけ医の指示の下、保健師がマンツーマンで6か月間の食事・運動指導を行って生活習慣の確実な改善を図るという徹底した取組です。

 こうした埼玉県のプロジェクトが国の目に留まり、現在では内閣官房の健康・医療戦略室において「埼玉県方式」を日本全国に広げるべきだというお話が出ています。2月15日(月曜日)には、経済団体、保険者、自治体、医療関係者等でつくる「日本健康会議」の事務局長である渡辺俊介(わたなべ しゅんすけ)氏からインタビューがありました。このような取組は呉市など市レベルではありましたが、全県展開というレベルでは珍しいということで、全国的に注目されているようです。現在のプログラムをしっかり実践して、まさしく糖尿病重症化の予防対策を全国に向けて発信していきたいと考えています。