毎月、厚生労働省から全国の有効求人倍率が発表されます。有効求人倍率とは、求職者(仕事を求めている人)1人当たり何件の求人があるかを示すものです。例えば、就職したい人が100人いて、会社側から120人の人手が欲しいといったときには有効求人倍率は1.2倍になります。逆に会社側は80人しか雇いたくないのに、100人就職したい人がいると、有効求人倍率は0.8倍ということになります。

毎月、47都道府県の有効求人倍率が発表されますが、埼玉県の順位は、近年、下位になっています。良くて43位、悪い時は最下位になったりしましたが、このところ、45位あたりが多い状況です。普通に受け止めると、他の都道府県に比べて有効求人倍率が低い埼玉県は、最も仕事の無い県の一つだと思われてしまうわけです。

神奈川県も埼玉県と同じように、43位などになったりしていますが、横浜や川崎を抱えている神奈川県が日本で最も仕事の少ない県の一つだというふうには誰も思わないでしょう。

実は、有効求人倍率は求人・求職の実態を表していません。それは、この数字があくまでハローワークを通した求人・求職に限られるとともに、求人登録の仕組みにも問題があるためです。

首都圏の場合は、新聞折り込みの求人広告や、駅などに置かれた求人情報誌、ネットの求人求職サイトなどが数多くあり、多くの人がそうしたものを利用して求職活動を行っています。したがって、ハローワークを通した求職が少ないのです。

埼玉県は、ハローワークを通さないで就職をされる方が最も多い県の一つです。厚生労働省の平成26年「雇用動向調査」によると、本県で、ハローワークを通して就職をされる方はわずかに2割。残りの8割の人たちは折り込み広告とか求人雑誌、あるいは縁故などハローワーク以外のルートで就職をされる方々です。

このように、有効求人倍率が低いことがそのまま埼玉県に仕事が少ないということにつながるわけではありません。1月15日付けのブログにも書きましたが、過去10年間で本県のGDP(県内総生産)が日本全体のGDPに占める割合の伸びが全国2位、県内に本社を置く企業の増加数は全国1位、過去12年間で銀行の貸出残高の増加額が全国2位となっています。埼玉県はこの10年来、企業活動が最も活発な県です。企業経営者の皆さんの声を聞いていると、むしろ人手不足の方を心配しなくてはならないと思っているところです。

また、ハローワークの求人登録の仕組みとして、東京の本社で埼玉県内の支店分も含めて一括求人すると、その求人数は全て東京都に計上されるため、都内の企業の支店が多い埼玉県の有効求人倍率は実態よりも低くなります。

このように、厚生労働省が発表する有効求人倍率は、現在の求人・求職の全体像を表しておらず、そうした意味で、「有効」とは言えないと思います。これらを踏まえ、本県では、地域の雇用情勢を適切に反映できる新たな指標を速やかに公表するよう、国に要望しているところです。