彩の国だより7月号の知事コラムでは、埼玉県の少子化対策などを紹介させていただきました。反響が大きく、いつもの4倍程度の御意見が広聴広報課に寄せられました。「目から鱗(うろこ)だった」という話が多かったようです。
 今日、少子化対策が大きく取り上げられていますが、私はそもそも論として、日本の様々な政策が4人家族を基準にして組み立てられていることをコラムの中で指摘させていただきました。

 政府の年金モデルや経済政策などでは、常に夫婦と子供2人の4人家族がモデルになっております。住宅政策においても、都市再生機構(旧住宅・都市整備公団)は4人家族を前提にしたような間取りで公団住宅を整備してきました。こうした国の動きに合わせるように、県営住宅でも4人家族を前提にした間取りになっていました。
 加えて、テレビのコマーシャルを見ていても、ほとんどが4人家族の設定になっていますし、生命保険会社などのパンフレットでも家族構成は必ずと言ってもいいぐらい4人家族です。そういう意味で、「4人家族が基本」という感覚が日本人の中で定着してしまっているような気がします。

 まずは、こうした状況を打破しなければならないと考え、今年度から県営住宅の建替えでは、多子世帯つまりお子さんが3人いる5人家族でも暮らすことができるような間取りを設定するようにしました。
 また、理想の子供数を3人以上としている夫婦に理想を実現できない理由を尋ねた国の調査によれば、経済的な負担がネックになっていることが明らかになっています。そこで、埼玉県では保育所等に通う3人目以降の児童の保育料の2分の1を補助する事業をこの4月から実施しております。このように、埼玉県では実効性のある少子化対策をスタートさせたところです。

  ところで、週刊現代の9月12日号で「現在の人口減少は、40年前に政府が狙ったものだった」というタイトルの記事が出ておりました。1974年7月に当時の海外経済協力基金総裁であった大来佐武郎(おおきた さぶろう)氏を議長とし、厚生省(当時)や外務省などの後援の下で開催された「日本人口会議」において、将来の食糧需給などを考えれば「子供は2人までに」という提言が発表されたそうです。
 当時の新聞記事も「人口爆発 抑止の道険し」「危機感が足りぬ日本」といった見出しで人口問題を報じていたようです。世界の人口爆発の状況に鑑みて、人口増加を抑制しなければならないという論調が主流になっていたようです。こうした考え方が、その後の日本の少子化につながったのではないかと思います。

 最近政府は、最低でも人口1億人は維持したいと目標を立てたり、少子化対策ほど緊急性の高い政策はないといったスタンスですが、少子化のもたらす影響に関して当時の見通しがいかに甘かったのかということが分かります。
 いずれにしても、このまま少子化が進んでいくと日本の国力が相当衰退していくのは明らかです。子供が3人以上でも安心して子育てができるような仕組みを構築していかなければならないと私は考えております。
 もとより強制するものではありませんが、埼玉県は今後そうした先導モデルを創っていきたいと思います。