来月で平成という時代が終わりを迎えます。先日閉会した平成31年2月定例県議会では、経済対策についての質疑がありました。
平成元年の日本のGDPは410兆円でした。平成15年が515兆円ですから、15年間で約25パーセント成長しています。一方、平成28年のGDPは538兆円で平成15年と比べてわずかに23兆円しか増えていません。
この間に政府は、赤字国債を発行しながら経済対策をその都度、その都度打ってきました。そのことが結果として日本のGDPにどう影響したのか、本当はもっと政府での総括が必要なのかもしれません。

日本のGDPがあまり伸びなかった平成の30年間に、同じ先進国のイギリス、フランス、ドイツなどのGDPは約2倍に成長しています。中国の30倍は論外としても、日本の状況は寂しい限りです。一般的に景気対策といえば、不況下において個人消費を刺激するための減税、民間投資を促進するための減税、あるいは公共投資といった政策が考えられます。
しかし、外需依存の行き詰まりや超高齢化、さらに知識社会化など大きな社会構造の変化に直面している日本では、現在の経済状況は構造的な問題として捉えるべきであり、短期的な対策だけでの改善は困難ではないかと思わざるを得ません。

構造変化型の不況に対しては、一般的な短期対策とともに構造的変化に対応する政策の再構築が求められます。国民経済を構成する最も基本的な単位である国民一人一人にまで遡った政策が必要となります。

国家の長期的な成長可能性は、国民一人一人の可能性をどれだけ開発できているかという軸と、社会の中で国民が自らの能力を発揮できる機会がどれだけ開かれているか、あるいはそのバリエーションが豊かどうかという軸、この二つの軸が重なり合う中で決まってくるのではないかと思います。
つまり、一人一人の能力が開発されてキャパシティが大きくなればその人の活動範囲は広がり、所得も増え、そして消費も増えていく可能性が高まります。しかし、それだけでは十分ではありません。社会全体が様々な機会にあふれていて、誰一人として社会の隅っこに取り残されることなく活発に社会活動に参画できる社会でなくてはなりません。一人一人の潜在能力の開発と社会における参画の広がり、この二つの軸が重なり合う結果が国民の豊かさにつながり、長い目で見てGDPを増やすことになります。

こうした視点を持って埼玉県でも取り組んできましたが、今後はさらにこうした視点が重要になると思います。国においては、正に思考の転換を図っていただきたいと思います。