埼玉県の姉妹州であるメキシコ合衆国メキシコ州が、花火製造の盛んな地ということを御存じでしょうか。メキシコ国内で製造される花火の60パーセントが同州で作られています。

そのルーツはスペイン植民地時代にさかのぼります。スペインから持ち込まれた火薬が、独立後、教会のお祭りの中で花火に活用されるようになったそうです。中でも「カスティージョ(城)」という仕掛け花火が有名です。これは、30メートルほどの塔にくくり付けられたメタル製フレームの装飾物が、フレームに取り付けられた花火の力で回転するというものです。

一方で、問題もあります。メキシコでは、花火の製造現場や打上げ時に事故が多く発生しているのです。火傷をしても「神の御加護」があるという考えが根強いこともあり、日本のように保安距離の決まりが整備されていないそうです。
メキシコ州では新たに設けた州立花火研究所を中心に、更なる花火産業の振興を目指し、2018年から安全管理対策づくりに乗り出しました。

そうした中、日本花火の製造や安全管理技術に埼玉県の知見を生かしたいという申出が同州からあり、技術協力を開始しました。
早速、昨年10月にメキシコ州の花火専門家を受け入れました。世界一の四尺玉で有名な「こうのす花火大会」の視察や花火製造工場での研修を行い、しっかりした安全対策や製造過程を学んでいただきました。この1月には県から花火の専門家を同州に派遣し、技術を指導したところです。

現地では歓迎花火会が開催され、埼玉とメキシコの友情を表現する特別なカスティージョが披露されました。まが玉、コバトン、両国の旗、富士山、干支の猪などをデザインした仕掛け花火が順次回転し、非常に見ごたえのある感動的な花火だったとのことです。
歓迎花火会には、1985年メキシコ州大地震の時に被災された地元の方々約20名も駆けつけました。埼玉県民の皆様から寄附いただいた義援金で小学校の壊れた屋根を直してもらったことについて、「埼玉県のおかげで子供が小学校を卒業できた」、「いつも埼玉県に感謝している」と多くの感謝の言葉をいただいたそうです。改めて県民の皆様にお礼申し上げるとともに、本県とメキシコ州との交流の深さを感じました。

今年は姉妹提携40周年です。先月下旬には高瀬 寧(たかせ やすし)駐メキシコ特命全権大使に来県いただき、メキシコ州との交流促進をお願いいたしました。
今後のメキシコ州との花火交流に御期待ください。