「フレッシュな人求む」という求人広告を出したIT企業に高齢者が応募してきた場合、その能力を実際よりも低く評価してしまうケースがあるそうです。これは、「フレッシュな考え方を持つこと」と「若いこと」を無意識のうちに結び付け、高齢者でもITに詳しかったり、フレッシュな考えを持つ人がいる可能性を排除してしまった結果のようです。
このように、人は過去の経験や習慣、周囲の環境などから身に付いた、ものの捉え方にゆがみや偏りがあり、「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」と呼ばれています。「男性は運転がうまい」、「女性は控えめな方がよい」、「男性は理系、女性は文系」、「関西人はお笑いが好き」、「東北人は無口」などが典型例とされています。
「アンコンシャス・バイアス」があると職場に悪影響が出ることが分かっています。例えば、「女性は控えめな方がよい」というバイアスが強いと、女性たちが自分の意見を言うことに消極的になり、その結果、女性社員が活躍しづらくなって職場の生産性が低下してしまいます。一方、職場のバイアスを解消して多様性を1%進められれば、業績は9%上がるという研究成果もあります。1%の変化が9%の成果ですから大きいですね。
グーグルで「アンコンシャス・バイアス」をなくすことを目的とするダイバーシティ(多様性)研修を担当している山地由里(やまち ゆり)氏は、「アンコンシャス・バイアス」を解消する方法として、「誰もが無意識の偏見を持っているという共通認識を持つこと」と「第三者による気付き」の重要性を指摘しています。
「アンコンシャス・バイアス」は、長年の偏見が瞬間的かつ無意識に表に出るものなので、本人が自ら意識的に解消するのは、なかなか難しいそうです。かといって、当事者が「それは偏見だ」と直接指摘するのでは人間関係を壊してしまう可能性があります。近くで観察していた第三者が指摘することで本人に「気付き」が与えられ、ものの捉え方には多様性があるということを認識してもらうのがいいようです。指摘の方法には決まりがなく、言葉で言いにくければ、メモをさりげなく机の上に置いておくという方法でもよいそうです。
県庁の各職場でも気付かないうちに「アンコンシャス・バイアス」が醸成されているかもしれません。「民間企業派遣」や「世の中大学」、「職員みんなで地域活動運動」など、職員が外部の情報や価値観に触れ、様々な“気付き”を得る「他流試合」は県庁にある「アンコンシャス・バイアス」を解消する大きな一助となるものかもしれません。