9世紀の中国、北宋時代に活躍した政治家に欧陽脩(おうようしゅう)という人がいました。文学者、歴史学者としても有名で、唐代から宋代にかけて古文によって名声を得た「唐宋八大家(とうそうはちだいか)」の一人にも数えられている人です。
この欧陽脩は良い考えの生まれやすい状況として「馬上(ばじょう)」、「枕上(ちんじょう)」、「厠上(しじょう)」を挙げています。それぞれ「乗り物に乗っている時」、「布団で寝ている時」、「トイレの中」という意味になります。
現代の「馬上」と言えば通勤電車でしょう。昨年、ある民間シンクタンクが首都圏に暮らすビジネスパーソン412人を対象に通勤電車の中の過ごし方を尋ねたところ、複数回答(最大三つまで)の1位は「睡眠をとる」でした。以下2位は「何もしない」、3位は「ニュースサイトを見る」、4位「小説を読む」、5位「ゲームをする」でした。思考を深めるような「ビジネス書・自己啓発本を読む」は8位、「新聞を読む」は9位、「ビジネス雑誌を読む」は10位と少数派でした。
この通勤時間を活用して、物事を考えたり整理をする習慣が身に付けば、正に「馬上」のように良い考えが生まれやすい時間となるかもしれません。ちなみに総務省が行った平成23年の「社会生活基本調査」によると、通勤通学の時間が最も長いのは神奈川県で43分、埼玉県は2位の41分、3位は東京都と千葉県で39分であったようです。この41分をどう活用するか、それによって人生が変わるかもしれません。