埼玉県産業技術総合センター(SAITEC(サイテック))が次世代蓄電池として期待されるマグネシウム蓄電池の開発に成功しました。これまで難しかったマグネシウム蓄電池の実用化に向け、大きく前進する成果を挙げることができました。この研究は現在県が進めている「先端産業創造プロジェクト」の一環として、県内企業との共同研究や開発協力を得て進めてきたところです。
今回開発したマグネシウム蓄電池は、低電流で長時間稼働させる小型の機器に向いております。したがって、携帯電話やスマートフォン、ノートパソコン、タブレット端末、そして最近、次々と商品化されているウェアラブル機器(※)などに活用できる可能性が高いと思われます。従来こうした機器の電池にはリチウムイオン電池が使用されていますが、リチウムイオン電池は容量が小さく、水が掛かったりすると発火の危険があるなど安全面での課題があります。また原料のリチウムはレアメタルであることから地域遍在性があり、極めて高価で、時折、原産国が戦略的物資として扱うことがあるために入手が困難になることもあります。
一方、マグネシウム蓄電池はリチウムイオン電池の2倍を超える容量があります。したがって、スマートフォンなどに使用できた場合、これまで1日分しか電池がもたなかったものが、マグネシウム蓄電池になれば2日分もつようになります。また原料のマグネシウムは地球上に豊富に存在する資源で、価格もリチウムの25分の1程度と比較的安価に手に入れることができます。そういう意味で小型民生用電池の分野では、今後様々な用途でリチウムイオン電池からマグネシウム蓄電池に置き換わる可能性を秘めています。
従来研究されてきたマグネシウム蓄電池にも、室温での動作や充電の繰り返しによる劣化などに課題がありましたが、今回、これまでの課題を克服したマグネシウム蓄電池ができました。
SAITECが電池メーカーや県内企業と密接な共同戦線を張りながら、小型民生用電池の世界市場への新たな展開を仕掛けていくことが可能になります。安全・小型・軽量・大容量という、正に理想的な性能を持つマグネシウム蓄電池がこの分野の市場を大きく変える可能性があります。
これに続いて本県が進める他の先端産業創造プロジェクトも更に成果を出していきます。
※ 「ウェアラブル機器」とは、身に付けて持ち歩くことができる情報端末の総称。携帯情報端末機能を持つ腕時計や頭部に装着するディスプレイなどはすでに製品化されている。