9月12日(土曜日)付けの朝日新聞夕刊に「ローカリストの時代」というタイトルで、「さきたま出版会」(さいたま市南区)の創業者であり、会長の星野和央(ほしの かずお)さんが紹介されていました。さきたま出版会が1冊目の本を刊行してから40年、今日に至るまで地域の歴史や文化などにまつわる本を千冊近くも出版しているそうです。
大学卒業後、都内で編集者をしていた星野さんに転機が訪れたのは35歳のときだそうです。御子息が通う小学校でPTA役員になったことを機に、地元と向き合い、忘れ去られようとする文化遺産があることに気付かれた星野さんは、1974年に独立し、さきたま出版会を設立されました。そして同じ思いを持つ市の教育委員会の職員や社会科教師たちに執筆を依頼し、翌年「埼玉ふるさと散歩 浦和市」を初出版しました。出版した1万5千部の半数以上が旧浦和市内で売れ、その後、他市からも出版要望があったことから「ふるさと散歩」をシリーズ化、経営は軌道に乗ったそうです。
出版活動のもう一つの目的は、社是に「地域コミュニティーの核とならん」とあるとおり、人の輪をつくることだったそうです。星野さんは、まちづくりや文化研究、異業種交流など40を超えるグループに所属し、このうち8つは自ら立ち上げられました。その一つで、肩書きを外した懇親の場である「ヤカンの会」からは出版のアイデアも出てくるそうです。「さきたま出版会」では現在も、「ふるさと散歩」シリーズのほか月2冊のペースで新刊を発行しています。
また、星野さんは青年海外協力隊の隊員を埼玉から送り出す支援組織の会長にも就任されており、その激励会の席では「足元をしっかり見据えた知識や生き方の基礎がないと、海外の社会にも溶け込まない」といつもおっしゃっているそうです。埼玉の地域資源である歴史、文化をタテ系に、人のつながりをヨコ系にして、地域のアイデンティティの形成、地域の活性化に力を尽くしてきた星野さんの心意気に改めて敬意を表したいと思います。