昨日に引き続き、元々は住まいや建築に関する用語であった言葉が、本来とは異なる意味で日常使われている例を紹介します。
相手が約束を破ったり、言い訳をしたりすることが出来ないように、あらかじめ相手に言い聞かせるという意味の「釘を刺す」という言葉があります。
この「釘を刺す」という言葉も、建築物の構造を固定することから転じて、あらかじめ念を押すという意味で使われるようになったそうです。
古来、日本の木造建築では、材木と材木を接合するに当たって、主に枘穴(ほぞあな)を開けた材木に枘(ほぞ)を作った別の材木をはめ込む「枘組み」という工法が使われていました。
鎌倉時代の頃から、枘組みで組んだこの接合部分に念のため更に釘を打ちこんで動かないようにする新たな工法が生まれ、定着していったそうです。そこから転じて、正に念を押すという意味になったというわけです。
ところで、当時の釘は当然「和釘」であり、その断面は角張り、先端が剣先のように尖っていました。このため、枘穴にはあらかじめスムーズに釘が刺しこめるように加工が施されていたということです。このことから、「釘を打つ」ではなく「釘を刺す」という表現になったようです。