昨年12月6日(木曜日)に水道法が改正され、新聞各紙に「水道民営化へ」といったニュースが掲載されていました。

実は今、各地の水道事業は、大きな課題に直面しています。一つは、人口減少や節水意識の向上などにより水需要が減少し、経営状況が悪化することです。日本の家庭で使用される水量は減少を続け2065年にはピーク時の6割に減少すると推計されています。

もう一つは老朽化した施設の更新です。高度経済成長期に大きく普及した水道管は更新時期を迎えていますが、更新率は全国平均で0.75パーセントに過ぎません。今のペースで進めた場合、全ての管路を更新するのには130年以上を要するとの試算もあります。

このような状況を背景として、水道法の改正は行われました。改正のポイントは大きく2点です。一つは水道事業の経営基盤を強化するため、広域的な連携を推進するよう努力しなければならないこと。もう一つは、地方公共団体に水道事業の権限を残した上で、民間事業者に運営権を売却するという「コンセッション方式」の導入を可能としたことです。

国は「コンセッション方式」を採用すれば民間の経営ノウハウにより効率化が図られるとしていますが、人間が生きていく上で欠かすことのできない水の供給を民営化するということについて反対の声もあります。
また、そもそも民営化にどのようなメリットがあるのかという疑問もあります。

その上で、私から一つ重要な点を指摘させていただくとすれば、仮に百歩譲ってコンセッション方式を導入するとしても、それは広域化を実現した上でなければならないということです。

民間事業者には広域化を行う権限がありません。埼玉県内では現在、57の事業者(市町村等)が水道事業を運営しています。広域化の前に民営化を急いでしまうと、小さな事業単位がそのまま残ってしまい、民営化のメリットを生かすことはほとんどできないでしょう。