12月15日(土曜日)、本庄市児玉文化会館(セルディ)で「第12回塙保己一賞」の表彰式がありました。

埼玉県が誇る塙 保己一(はなわ ほきいち)翁は幼くして光を失いますが、不屈の努力を重ね、盲人社会の最高位である総検校(そうけんぎょう)にもなられた方です。特に、全国に散逸していた様々な文献を取りまとめ、666冊から成る大文献集『群書類従(ぐんしょるいじゅう)』を編纂したことは、優れた業績として知られています。また、『和学講談所(わがくこうだんしょ)』を創立し、多くの弟子を育てました。
そこで埼玉県では、保己一翁の偉業を踏まえ、障害がありながらも不屈の努力を続けて社会的に顕著な活躍をされている方や、障害者の活動等に献身的な支援を行ってきた方などを、平成19年度から表彰しています。

毎年、塙保己一賞では「大賞」「奨励賞」「貢献賞」をお渡しするのですが、受賞された方々からいただくスピーチがいつも感動的です。
とりわけ、今回、45歳未満の頑張っている方を表彰する「奨励賞」を受賞した大胡田 誠(おおごだ まこと)さんのお話には、特に感動しました。
現在41歳の大胡田さんは、12歳の時に失明されました。その後、慶応義塾大学法学部、同法科大学院に進学し、平成18年に全盲の方としては日本で3人目となる司法試験合格を果たしました。現在は、弁護士として活躍されています。

お話によれば、4回目の司法試験でも合格できずもう諦めようと思い、御自身のお母様に相談をしたそうです。この時、お母様からは「頑張れ」とか「やめなさい」という言葉ではなく、「迷った時には、自分の心が温かいと感じる方を選びなさい」とだけ言われたそうです。そして、自分の心に問いかけたら「やっぱり弁護士になりたい、なろう」と改めて挑戦する勇気が湧いたということです。
お母様は9年ほど前に亡くなられたそうですが、その時に「ありがとう」と言えなかったので、この場で伝えさせてくださいと大胡田さんはお母様に感謝の言葉を述べられました。その言葉を聞き、私は目が潤み、思わず目から涙がこぼれ落ちてしまいました。

大胡田さんに限らず、毎回のように塙保己一賞の受賞者の皆さんからは感動をいただいています。困難な状況の中で、とても頑張っていらっしゃる方々の存在が、ほかの障害者の皆さんはもとより私たちに大変な勇気を与えていることが改めて分かります。
このような塙保己一賞があることに、保己一翁の出身地である本庄市の吉田 信解(よしだ しんげ)市長とともに喜び合ったところでした。