自転車は手軽で便利な乗り物ですが、運転の仕方によっては人の命を奪う凶器となることもあります。

8月に、スマートフォンを操作しながら電動自転車を運転し歩行者にぶつかって死亡させた女性に対して、重過失致死罪で禁固2年執行猶予4年の判決が出ました。事故当時、この女性は左耳にイヤホンを付けて音楽を聴きながら、飲物を持った右手でハンドルを握り、左手でスマホを操作しながら走行していたといいます。こうした状況を裁判では、「前方を注視しないばかりか、危険を察知したとしても直ちにブレーキをかけられない状態だった」と判断したものです。

この件を報道した8月28日(火曜日)の朝日新聞は、こうした「ながらスマホ」の自転車事故が各地で増え、昨年の事故件数は統計を取り始めた2007年以降最悪の45件だったと伝えています。さらに、原因別件数では、最も多い「画面の注視」が10年前の6倍に相当する29件である一方、「通話」は4件にとどまり、SNSやゲームに集中するあまり事故を起こすケースが増えているとしています。
「ながらスマホ」を研究している愛知工科大学の小塚 一宏(こづか かずひろ)特任教授によれば、スマホを利用しているときの視界は通常の約20分の1に狭まるそうです。
さらに、歩く速度が時速4キロメートルであるのに対して自転車は3倍、種類によってはそれ以上のスピードが出ます。出会い頭(がしら)の衝突を歩行者側が避けることは、非常に難しい状況です。もし歩行者側も「歩きスマホ」をしていたら、と考えるととても恐ろしい気がします。

しかし、こうした身の危険は一人一人の心掛けによって防ぐことができます。皆さん、「ながらスマホ」は絶対やめてください。スマホは時と場所を考えて使用しましょう。私の好むところでは決してありませんが、事故の重大性を考えると刑罰の対象とすることも検討せざるを得ないかもしれません。