7月31日(火曜日)の東京新聞夕刊に、脳性まひの少年の通学を支える手こぎの三輪自転車「ハンドバイク」の記事が掲載されていました。

滋賀県在住の高校三年生、北川 海人(きたがわ かいと)さんは脳性まひで常に左足がつま先立ちのような状態となるため、長時間の歩行が難しく、自転車にも乗れなかったそうです。

そんな海人さんに転機が訪れたのは中学一年生の時です。父が亡くなり、6キロメートル離れた学校に車で送迎してくれていた母、和代(かずよ)さんの負担を減らそうと、「一人で通学したい」と切り出したそうです。

障害者向けの自転車がないか、和代さんがインターネットで探し、見つけたのが朝霞市にある有限会社宇賀神(うがじん)溶接工業所でした。

宇賀神溶接工業所は、半世紀にわたり金属加工を手掛けてきた町工場で、足に障害のある男性の依頼でハンドバイクの開発を始めて以降、障害や身長に応じて様々なタイプを製作しているとのことです。

一般にハンドバイクは寝そべるように乗るレース用や、車いすに前輪を装着するタイプが主流ですが、これらは乗り降りしづらく毎日の通学には向いていないそうです。そこで宇賀神溶接工業所ではシートの高さや足置きの位置を調節したフレームを開発したということです。

埼玉県では、将来成長が見込まれる医療関連産業の育成や集積を図るため、医療イノベーションプロジェクトを推進しています。実は宇賀神溶接工業所は、このプロジェクトの「医療機器等試作品コンテスト」で平成28年度にアイデア賞を受賞した会社であります。

引っ込み思案だった海人さんはハンドバイクをきっかけに積極的になり、中学二年生で琵琶湖一周に挑み、何と二日間で走破したとのことです。

海人さんは「ハンドバイクは人生を変えてくれた」と語り、現在は大学受験に向けて勉強しながら、声優になる夢を膨らませているそうです。

世界最古の自転車ともいわれる「陸船車(りくせんしゃ)」の発祥の地である埼玉で、自転車の新しい技術が生まれ、人に夢を与えていることに大変うれしくなりました。