最近、スーパーなどの食品売り場で「有機」や「オーガニック」という表示を見る機会が増えてきました。一般に値段が高い野菜のイメージがありますが、消費者の味へのこだわりや安心・安全志向の高まりが影響しているのでしょう。

有機農業とは、化学的に合成された肥料や農薬を使用しない農業です。熊谷市にある県の農業大学校には、全国に42ある公立の農業大学校の中でも珍しい有機農業を学ぶ専門コースがあります。現在、高校を卒業したばかりの若者から勤め先を定年退職した人まで男女14人が、1年かけて露地野菜の栽培管理方法のほか、土や堆肥作りなどを学んでいます。農薬を使わないため、ブロッコリーとレタスのように一緒に育てると虫が付きにくい野菜同士を近くに植えるなど、実践的な勉強をしています。

最近の調査では、新規就農希望者の28パーセントは「有機農業をやりたい」、65パーセントは「有機農業に興味がある」と答えています。
また、有機野菜の販売価格は通常の野菜と比較して1.5倍前後ですが、消費者の6割は値段や安定供給などの条件が合えば有機農産物を買いたいと考えているそうです。
我が国の有機農業の生産面積は、現在のところ耕地面積の0.5パーセントに過ぎません。市場規模も米国が4.8兆円、欧州が4兆円となっているのに比べ、日本は1,300億円にとどまっています。正に今後の成長が期待されている分野と言えます。

埼玉県には、日本にまだ有機農業という言葉がなかった1971年に、小川町で有機農業を始めた金子 美登(かねこ よしのり)さんという先駆者がおられます。2015年にはその功績がたたえられ、黄綬褒章(おうじゅほうしょう)を受章されています。今では金子さんの元に、国内外からたくさんの人が研修や視察に訪れています。
金子さんには、県の農業大学校で特別講師を務めていただいています。有機農業を学んだ人たちが、将来、第二、第三の金子さんとして、付加価値の高い農業を広めてくれることを期待しています。