3月24日(金曜日)の読売新聞(夕刊)に、日本の科学研究が失速しているという記事が掲載されていました。イギリスの科学誌「ネイチャー」は、日本の科学研究の現状についての分析結果を発表しました。日本の研究者による論文数は、最近5年間で約8%減少するなど停滞が著しいそうです。同誌は、「今後10年で成果が上がらなければ、研究で世界トップ級の地位を失いかねない」と警鐘を鳴らしています。
ネイチャーは、同誌やアメリカの科学誌「サイエンス」など、自然科学系の主要学術雑誌68誌に掲載された論文を対象に分析しています。その結果、日本の大学・研究機関に所属する研究者が著者である論文数は、2012年から2016年の間に8.3%減少しているそうです。中国が47.7%、英国が17.3%増えたのとは対照的な結果になっています。
さらに、より広範囲の学術雑誌を対象にした別の情報調査会社のデータも分析しています。世界全体の論文数は、2005年から2015年の間に約80%増えたのに対し、日本の論文数は14%増にとどまり、全体に占める割合も7.4%から4.7%に落ち込んでいたそうです。
分野別では、全14分野のうち、医学、数学、天文学を除く11分野で減っているようです。
同誌は失速の原因について、ドイツや中国、韓国が科学技術予算を大幅に増やす一方、日本は2001年以降ほぼ横ばいで、その多くが一部のトップ大学に回っているためと指摘しています。研究者の長期雇用が減り、若手研究者の短期雇用が大幅に増えたことも停滞の背景にあるとみています。
そういえば、一昨年、ノーベル物理学賞を受賞された埼玉県出身の梶田隆章(かじた たかあき)教授が言っておられました。「このところの日本人のノーベル賞受賞の好調さは、黄金の70年代、80年代の結果であると私はみている。」と言われ、「このところの予算の縮小などが将来、日本の科学力を弱めることになるのではないか。」と懸念されておられました。正にそうした懸念がこのような形で表れたのではないかと思わざるを得ません。
日本は科学技術こそが立国の原点ではないかと思っています。国においてもしっかりと、こうした認識に立っていただきたいと思います。もとより、埼玉県でもしっかりと対応していきたいと思います。