今、世界100か国以上で販売されている大ヒット文具、貼って剝がせるメモ用紙「ポスト・イット」について面白いエピソードがあります。
1969年にアメリカの化学メーカーである3M(スリーエム)社の研究員であったスペンサー・シルバー氏が強力な接着剤を開発しようとして、たまたま粘着力の非常に弱い接着剤を作り出してしまったそうです。
当初、この接着剤は使い物にならないと思われていましたが、1974年に、やはり同社の研究員であったアーサー・フライ氏が、これを本のしおりに応用できないかと思い付いたそうです。しおりにして本に貼っておいて、また剝がして使う、そういう使い道だったようです。現在の「ポスト・イット」は、しおりというよりもメモを書いて、忘れないように机の上などに貼っておく使い方が主流となり、オフィスの必需品となっています。要するに、失敗が大成功のもとになったという話です。しかし、このような「転んでもただでは起きない」といったことは偶然に起こるわけではありません。
『天才科学者のひらめき36 ― 世界を変えた大発見物語』の著者であり、マウンテン光学システム・テクノロジー社の社長でもあるリチャード・ゴーガン氏は、偶然を成果につなげるには“3つの要素”が必要であると分析しています。
第一の要素は周到な「準備」だそうです。十分な準備をしていないと、意図しなかった結果は、準備不足による単なる失敗と片付けられてしまう可能性が高いそうです。本来の目的や目指すべき成果について、あらかじめ十分に考え、検討していれば、失敗も場合によっては成功のチャンスになるということのようです。
第二の要素は思いがけない結果をチャンスと捉える「心構え」だそうです。何事も「転んでもただでは起きない」という心構えが大事ということです。
第三の要素は「欲求」だそうです。偶然に得られた結果が何なのかを知りたいという強い意志があるかどうかが、その結果を「成功」にするかどうかの大きな分かれ道になるとゴーガン氏は強調しています。
業務に追われて時間的にも精神的にも余裕がなくなると、思いがけない結果を直ちに失敗と感じ、ついいら立ってしまうことがあります。しかし、ちょっと立ち止まってよく掘り下げてみると、新しいアイデアにつながる意外なヒントが隠れているかもしれません。
成功する人たちは心構えが違うということですね。