本県を代表する観光地である川越市を2016年に訪れた観光客が704万人に達し、過去最高となりました。川越氷川祭の山車(だし)行事のユネスコ無形文化遺産への登録も追い風となり、前年比6%増と5年連続で増加し、県内有数の観光地として存在感を高めています。

ところで、川越市にはかつて4万6千坪にも及ぶ巨大な川越城がありました。この地に城が築かれたのは1475年で、関東管領扇谷上杉持朝(かんとうかんれい おうぎがやつ うえすぎもちとも)が古河公方足利成氏(こがくぼう あしかがしげうじ)に対抗するため、太田道真(おおたどうしん)・道灌(どうかん)父子に命じて築かせたのでした。

そんな川越城には、なんとも奇妙な「七つの不思議」が伝わっています。「意外と知らない埼玉県の歴史を読み解く!埼玉『地理・地名・地図』の謎」(実業之日本社)に紹介されています。

一つ目は「人身御供(ひとみごくう)伝説」です。建設を予定していた周辺の土地は地盤が弱く、城を築く土塁がなかなかできなかったそうです。すると、沼の主である龍神が太田道真の夢枕に現れ、「明朝、お主の前にいち早く現れた者を人身御供として差し出せば築城は成就するであろう」と告げたとのことです。

ところが明朝、道真のもとに真っ先にやってきたのは、あろうことか最愛の娘だったのです。道真から事の次第を聞いた娘は、自ら沼に身を投げて龍神にその身をささげたところ、城は無事に完成したそうです。

また、こんな話も伝わっています。太田道真・道灌父子が城内に水を引き込むための水源を探していたとき、一人の老人が井戸で足を洗っていました。老人は、二人を底知れぬ深さの水源地に案内した後、いつの間にか姿を消してしまったそうです。

後に、この老人が、日頃から信仰していた三芳野(みよしの)天神の化身だと分かり、老人が使っていた井戸は「天神洗足(てんじんみたらし)の井水(せいすい)」と名付けられました。

そのほか、「初雁(はつかり)の杉」、「霧吹きの井戸」、「よな川の小石供養」、「七つ釜と片葉の葦」、「城中蹄(ひづめ)の音」といった伝説が残されています。現在、川越城にまつわるこれらの七不思議は、「川越城の七不思議めぐり」として観光コースになっています。

本県では、川越を周遊して秩父・長瀞を巡る観光ルートを「SAITAMAプラチナルート」として推奨しています。小江戸川越を散策し、長瀞でライン下り、秩父で温泉に宿泊して、翌日は秩父の自然を満喫してはいかがでしょうか。