看護師というと誰もが思い浮かべるのはイギリス人看護師、フローレンス・ナイチンゲールでしょう。彼女に対するほとんどの人の印象は、危険を顧みず、兵士を懸命に看護した献身的な「白衣の天使」といったところだと思います。
確かにその印象は間違いではありません。児童書や映像などでは戦地での活躍が強調され、我々に従軍看護師としてのナイチンゲール像を印象付けています。
しかし、彼女の実像は社会を変えたイノベーターとして捉えた方がふさわしいとも言えます。彼女の偉大な功績は、クリミア戦争が終結し、イギリスに帰国してから始まったのです。
彼女は、戦地における劣悪な衛生環境、物資不足、感染症による戦死が負傷による戦死の30倍に上ることなどを統計分析し、独自に考案したグラフを用いて報告書を作成し、ヴィクトリア女王直轄の委員会に提出しました。この報告書は1,000ページにも及んでいたそうです。
客観的な事実はどんな権力よりも強い。ナイチンゲールが突き付けた事実が政府を動かし、戦地はもとより市民生活における衛生環境が見直され、医療改革が大きく前進することになったそうです。
その後、ナイチンゲールは感染症がまん延しにくい病院の設計、看護学校の設立など、現在の医療の発展につながるイノベーションを実現していったそうです。
客観的な事実に基づいた説明を通じて賛同者を増やし、共感の力で現実を変えていく。あるいは現場からの声を改革につなげる。どの時代でも、どの分野でも改革を実現する原理は一緒なんですね。客観的な事実。現場からの報告。あるべき姿の提示。そして、その実現。頑張りましょう。