郷土の偉人である渋沢栄一翁は、1867年(慶応2年)、27歳の時に幕府の使節団の一員としてフランスに渡り、ヨーロッパの進んだ政治、経済、文化を学んでいます。当時、幕府は使節団の世話をするために、フランス政府に頼んで二人の特別顧問を付けてもらったそうです。

一人は銀行家のフロリヘラルト、もう一人は軍人のビレットです。渋沢翁はフロリヘラルトからヨーロッパの金融に関する多くの知識を習得しました。この経験が後に渋沢翁をして日本における最初の民間銀行をつくらせ、そして株式会社あるいは金融制度を確立させる上で大きな影響を与えたと言われています。

旅の途中、若き渋沢翁はフロリヘラルトとビレットがお互いの立場に関係なく意見を言い合い、対等に議論している姿を見て大変驚いたそうです。当時日本は士農工商の身分制度があり、商人である銀行家と武士に相当する軍人が対等に話をすることなど考えられないことだったからです。渋沢翁は日本と異なる文化に触れ、新しい世界があることに気付いたわけです。正に彼が国際的な視野を得た瞬間のエピソードでもあったのではないでしょうか。

埼玉県では世界で活躍する人材育成のため、10億円を出資し「埼玉県グローバル人材育成基金」を設けています。基金事業の一つである「『埼玉発世界行き』奨学金制度」では平成23年度から4年間で約1,100人の奨学生を派遣しています。今年度も全体で464人の応募があり、このうち285名が新たに海外に派遣される予定です。若き日の渋沢翁がそうであったように、世界は大きな「気付き」のチャンスに満ちています。奨学生の皆さんにはこの事業を通じて新たな知識を身に付け、様々な「気付き」を体験して、グローバル人材として羽ばたいてもらいたいと思います。帰国後は本県に新たな活力をもたらす「人財」として、大いに活躍されることを期待しています。