昨年の11月3日(木曜日)と4日(金曜日)の東京新聞に「夫源病(ふげんびょう)」という記事が掲載されていました。「夫源病」とは、医師であり大阪樟蔭女子大学教授の石蔵文信(いしくら ふみのぶ)氏が名付けたもので、夫が原因で妻が体調不良を起こすことを示す病気だそうです。夫の何気ない言動や存在そのものが妻にとってストレスとなり、体調不良の原因になるそうです。
「夫源病」は夫が退職した60歳前後の妻に比較的多いそうです。夫は定年退職後、職場のストレスがなくなる一方で、「やるべきこと」も「やりたいこと」もなくなって辛くなる人もいるようです。そんな時に妻にまとわりついたり、妻の外出先をチェックしたり友人関係に干渉したりすると、妻がストレスで体調を崩してしまうことがあるようです。我慢強く弱音を吐かないタイプの女性ほど夫源病にかかりやすいそうです。
以前、「母源病(ぼげんびょう)」という本がヒットしたことがありますが、とうとう出てきたかという感じです。かつては、「ぬれ落ち葉族」という言葉もありました。ぬれ落ち葉はべったりくっついて離れない。同じように、妻にべったりまとわりついて離れない。自宅から動かない定年退職後の夫のことでした。
石蔵氏は「定年退職の3年ぐらい前からは退職後の具体的なプランを考えた方がいい」と指摘しています。そして、退職後も新たな仕事や、ボランティアなど社会参加の重要性を強調するとともに、料理など家事を覚えることを勧めておられます。
埼玉県でもこうした事態が起こらないようにと考えたわけではありませんが、60歳以上の退職された方々も貴重な社会の戦力でありますから、就労したい人は仕事を、ボランティアで活躍したい人はボランティアを、今まで何もしていなかった人には改めて地域デビューを、というこの3つの選択肢がなんとかそれぞれの地域で可能になるように「シニア革命」を展開しています。まさしく「夫源病」は、この「シニア革命」の対極にあるものです。
日本は超高齢社会に突入しているところです。一方で世界でもまれに見る健康にして長寿な国でもあります。ここに着目しなくてはなりません。
現在の生産年齢人口の定義は「15歳から64歳まで」です。この定義に従えば2040年頃には日本と韓国が世界の主要国の中で、この生産年齢人口の割合が最も少ない国ということになります。
ところが、この定義を仮に「20歳から74歳まで」に置き換えてみますと、日本は2040年くらいに主要国の中で生産年齢人口の割合が最も多い国となり、それから50年はその状態が続きます。それだけ社会として強い国だということになります。健康長寿でシニアの肉体年齢がかなり若返っていることを考えると、この定義の見直しはむしろ現状に合っている気もします。いろいろな意味で高齢者の元気さ、高齢者の活躍というものが、まさしく日本の将来を決めることになります。
昨日、日本老年学会が医療の進歩や生活環境の改善で日本人の身体及び知的能力は10年前に比べ5から10歳ほど若返っているとして、高齢者の定義を75歳以上とし、65から74歳は「准高齢者」と区分し社会の支え手として見直すことを提言しました。正に同感であります。
埼玉発の「シニア革命」が日本の元気に貢献し、それが「夫源病」のない社会につながれば、こんなにうれしいことはありません。