県管理河川の土手沿いに繁茂(はんも)した竹の一部が雪の重みで折れて道路に70㎝程度はみ出し、それが自動車に接触して、傷を付け、破損した箇所の損害賠償を要することになった案件の報告がありました。道路管理者は市ですが、河川管理者は埼玉県、運転者も走行中は前方に注意する必要があったということですので、それぞれの過失割合に応じて修理費用を負担することになりました。

県が負担するのは金額的には約3万円です。想定しにくい自然に由来することですので、管理する立場上、責任の一部を負うことはやむを得ないものだと思います。ただ、この報告を受け、まず頭に浮かんだのが、3万円という数字が出てきているけれども、手続きに多分、この10倍ぐらいのお金がかかったのではないかということです。少なくとも、県土整備事務所の職員が現場を検証しに行ったでしょうし、市、運転者、損害保険会社とそれぞれ連絡を取り合いながら手続きを進めて、先ほどの額で折り合ったわけであります。

この案件を担当する課長が私のところに説明に来たわけですが、課長はこの間、副部長、部長と副知事の決裁を受け、最終的には私の決裁を受けるという形ですので、庁内での時間もそれなりにかかっているわけです。私や職員の時給なども換算していけば、当然この手続きに費やす様々な時間のコストは損害賠償額の何倍にもなるはずです。

民間企業であれば、現場の裁量に任せてスピーディーに処理するのではないでしょうか。少なくとも、社長にまで話を上げて、とはならないはずです。ところが行政の場合、損害賠償の額を定めることは議会の議決事項と法律で定められています。もちろん、あらかじめ議会が議決した金額以下の少額の損害賠償の場合、知事が決裁(専決処分)をした後に、議会に報告すればよいことにはなっていますが、いずれにせよ知事の判断を経る必要があるわけです。税金である貴重な公金を取り扱う以上、法やルールに則って処理することが、「役所の掟」なのですが、今回のケースでは改めて行政のコストについて考えさせられました。