ハーバード大学で一番人気のある国が日本と言われると、ちょっとビックリしますね。NHK報道番組のディレクターを務め、今は作家・コンサルタント・コメンテーターとして活躍している佐藤智恵(さとう ちえ)さんが書かれた『ハーバードでいちばん人気の国・日本 なぜ世界最高の知性はこの国に魅了されるのか』(PHP新書)を読みました。

ハーバード大学の授業では、「ケース(事例)」と呼ばれる教材をもとに、様々なディスカッションが行われています。その中で日本の事例は、学生たちに大変人気だそうです。

日本関連の事例は、大きく分けて三つの種類があるそうです。一つ目が、明治維新、戦後の経済成長など「日本が世界で初めて何かを成し遂げた事例」。二つ目が、英語公用語化、グローバル化、再建、環境経営など、どの企業でも直面しそうな「課題事例」。三つ目が、社員の“働く誇り”を引き出しわずか7分間で新幹線の全車両とトイレの清掃を終わらせる「新幹線お掃除劇場」など、いつの時代にも通用する「普遍的なリーダーシップの成功事例」だそうです。

このようにハーバード大学で日本が注目されている理由は、日本が「不確実性の時代を生きていくうえでの指針」を示していると考えられているためです。世界でも類を見ないほど平和で安定した国家をつくる偉業に成功した日本から、何が起こるか分からない時代の指針を見出そうとしているとのことです。

特に日本が世界の未来を先取りしているのが人口問題だと言われています。日本は先進国の中で最も高齢化が進んでいる国であり、このまま移民を受け入れないでいくのか、高齢者がもっと働けるような仕組みをつくるのか、あるいはもっと利子や配当などの資本所得を得られる仕組みをつくるのか、少子高齢化の問題にどう対処するのか、世界が注目しているようです。

環境問題についても日本は課題先進国とのことです。地球温暖化が進めば、小さな島国に1億2千万人を超える人々が住んでいる日本は特に甚大な被害を受けることになります。改めて日本の環境政策などが注目されています。

(次回へ続く)