昨日と一昨日、『ハーバードでいちばん人気の国・日本 なぜ世界最高の知性はこの国に魅了されるのか』(佐藤智恵著・PHP新書)について取り上げてきました。今日はその3回目です。

ハーバード大学の教授の皆さんは、日本は技術力だけでなく美意識にも優れていることに注目しています。そして、人を大切にするマインドと改善の精神が強いことに対しての評価も高いようです。さらに、日本人の環境意識は地球環境を救うのではないかと考えている人たちもいるようです。

また、高齢化社会は日本にとって千載一遇のチャンスだと指摘する教授もいます。困難な課題であればあるほど、日本人はそれをクリアする力を持っているので、まさしく高齢化も新たなイノベーションを起こすチャンスになるのではないかという見方すらあります。

こう見てくると、何やらこの本は日本礼讃の本のような感じもします。しかし、ハーバード大学では、日本のいろいろな課題について指摘されていることも事実です。

一番の課題は、日本が非常に快適な社会を作っていること。日本には安くておいしいレストランがいくつもあり、電車は遅れないし、犯罪も少なく、英語を話せなくとも何の不自由もないこと。こうした快適な社会は、日本の強みであると同時に弱点でもあるのではないかということです。快適な社会で生きているから、その社会の外に出るのを嫌がってしまう。こうした内向き志向になっているうちに、世界の流れに遅れてしまうのではないか。そうした意識によって、日本の長期低落は始まり、そこから脱出することが難しくなるのではないかと思われているようです。

また、日本の若者と話をすると、彼らは非常にクリエイティブで先端的なビジネスのアイデアを持っていることが分かるが、彼らは入社して20年くらい経たないと自分が本当にやりたいことができない。これでは若者の創造性を潰してしまうと指摘する教授もいます。

タイトルを見て手に取った本でしたが、一気に読み上げました。世界のトップエリートを育てる大学で、日本がこれほど興味を持たれ、評価されているとは知りませんでした。

いいところだけ読めば、ほめ殺しのようにも読めますが、実は、日本は自らのすばらしさをもっと生かせるはずだという激励の声であり、それを集めた書であると受け止めました。