平成19年度に、生活保護世帯で育った子供たちの4人に1人が再び生活保護を受けるというショッキングなデータが発表されました。高校を卒業していない、あるいは高校に入学していないというハンディが、自立のための就職や資格取得といった、その後の社会での様々な可能性を限られたものにしてしまい、こうした「貧困の連鎖」を生じさせているのかも知れません。
実際に、平成21年度の高校進学率データを見ると、県内全世帯が98.2パーセントなのに対し、生活保護受給世帯の子供たちは86.9パーセントでした。
そこで埼玉県では、平成22年度から生活保護世帯の子供たちのための学習教室を設置しました。高校進学、卒業までの学習支援を教師OBや学生の力を借りて展開した結果、この学習教室で学んだ子供たちの高校進学率は、県内全世帯と変わらない状況にまで上昇しています。
アスポート事業と名付けたこの「埼玉方式」は国会で注目され、結果的に生活困窮者自立支援法の制定へとつながり、平成27年度からは全国で展開されるようになりました。また、支援対象は生活困窮世帯にも拡大しています。
今年の4月、この取組は慶應義塾大学の駒村 康平(こまむら こうへい)教授らにより「検証・新しいセーフティネット-生活困窮者自立支援制度と埼玉県アスポート事業の挑戦」(2019年 新泉社)という本にまとめられました。この本は埼玉方式を検証しながら、新しいセーフティネットの在り方を探る内容になっています。
国・県・市町村の福祉や教育関係の皆様の参考になればと思います。