10月8日(月曜日)の日経産業新聞に掲載されていた記事が気になりました。株式会社三越伊勢丹ホールディングスが伊勢丹の府中店と相模原店、新潟三越の3店を閉鎖することを伝える内容です。

この3店には共通点があります。「百貨店が成り立つには100万人の商圏が必要」と言われてきましたが、この3店はいずれも隣接する自治体の人口を含めると100万人を優に超えており、条件が整っているのです。さらに、3店の売上高のピークがそろって1996年だったことも、百貨店商法の限界を象徴しているのではないかと記事は指摘しています。

実は、この1996年頃、日本の社会でいろいろなことがピークを迎えていました。生産年齢人口が95年にピーク。実質賃金指数のピークも正に96年。勤労者世帯の家計消費支出は97年がピーク。つまりこの頃が、給料が増えて常に安心して消費ができる最後の時代だった可能性があります。
経済産業省の商業動態統計でも、小売業の売上高は96年の146兆円がピークとなっています。戦後の右肩上がりの経済の頂点がこの96年だったということでしょう。

興味深いことに、経済の潮目が変わったこのタイミングで、低価格を売り物にした新興小売業が台頭しています。ユニクロを展開する株式会社ファーストリテイリングは、96年にSPA(製造小売り)の基盤づくりに乗り出しました。97年にはインターネットのショッピングモール「楽天市場」がサービスを開始しています。
一方、現在、96年以降苦戦が続いていた百貨店業界にも神風が吹いています。訪日外国人の買い物です。2017年の百貨店全体の免税売上高は約2,700億円となり、世界一の売上高を誇る伊勢丹新宿本店と肩を並べているそうです。

一般財団法人日本総合研究所の寺島 実郎(てらしま じつろう)会長のお話によれば、2000年から2017年の17年間で、日本の家計消費構造は大きく変化しているそうです。
全世帯消費支出の「衣」に関しては35.0パーセント減。「食」はさすがに1.0パーセント減ですが、「住」に関連するところは17.7パーセントの減となっています。「光熱・通信」関連は、スマホのせいでしょうか11.7パーセント増えています。また、「こづかい・交際費」関連支出は33.2パーセントの減で、居酒屋の業績がいまひとつというのもうなずけます。「教育・娯楽」関連19.2パーセント減ということで、高齢化の影響もあるのでしょうが、日本人が学んだり、遊んだりするのにお金をかけなくなっていることが見て取れます。

所得の面でも、本来、有効求人倍率の上昇や人手不足は所得の向上につながるはずなのですが、そういう動きが見えてこないのも気になるところです。