一般財団法人日本総合研究所会長で、多摩大学学長でもある寺島 実郎(てらしま じつろう)先生によるBS11の番組「寺島実郎の未来先見塾」が、毎週金曜日に放映されています。先日の番組で、2000年から2017年の間の経済指標の動きについて解説されていました。
まず、国民の所得と消費についてです。この17年間で日本の勤労者世帯可処分所得は8.2パーセント減り、全世帯消費支出も10.7パーセント減っているということです。
アベノミクスを通じて経済は曲がりなりにも拡大基調であるといわれていますが、それにも関わらず勤労者世帯の可処分所得が減っていること、そしてそれ以上に世帯消費支出が減っているという実態は、決して好ましい状態ではないでしょう。
番組ではさらに踏み込んで、2000年から2017年までの家計消費構造の変化を支出項目別に見ていきました。
すると、衣食住の「衣」に関する支出が35パーセントも減っています。一方、「食」関連は1パーセント減でほとんど減っていません。やっぱり「腹が減っては戦はできぬ」ということでしょうか。さらに、「住」関連は17.7パーセント減っています。畳を入れ替えるとか、カーテンを新調するとか、あるいは住宅の改築などを抑制している家計の実態がうかがえます。もっとも、この間にユニクロやニトリは売上げを10倍にしているということですから、低価格で一定の品質を保った商品についてはヒットしているということでしょう。
「光熱・通信」関連の支出が11.7パーセント増えていることも特筆しておかなければなりません。やはり、皆さんがスマホを持つようになった影響でしょうか。また、「こづかい・交際費」関連は33.2パーセント減っています。正にお父さん、あるいは若い人たちのおこづかいが減っているということでしょう。居酒屋やスナックは厳しいですね。
さらに、「教育・娯楽」関連は19.2パーセント減っています。学習塾の費用は抑えなくても、お父さんお母さんの書籍購入や、あるいは趣味やレジャーにかける費用を抑えるといった状況が考えられます。いずれにしても、家計消費構造に関してはなかなか厳しいものがあります。
もっとも、こうした数字には、定年後の再雇用者が増えているなど、急激に進む高齢化の影響もありそうです。
このような分析からは、正に株価が上昇している中で、一般庶民は家計をやりくりしながらじっと耐えているという姿が見えてきます。国民生活を真の意味で豊かにするという展開には、まだまだ至っていないと判断せざるを得ません。