5月18日(木曜日)に、内閣府が2017年1~3月期のGDP速報値を発表しました。実質GDPの伸び率は年率換算で2.2%であり、数字の上では、景気は順調に回復しているように見えます。戦後3番目の景気拡大局面だとも言われていますが、一方で、実感が湧かないと言われる方々が多くいらっしゃいます。

そうしたところを指摘されたのが、日本総合研究所会長で多摩大学学長でもある寺島実郎(てらしま じつろう)先生です。寺島先生は、21世紀に入ってからの日本の家計消費構造の変化について分析し、「日本が抱える最大の課題は消費の構造変化だ」との論点を提示しておられます。
2000年から2016年までの間の所得と消費は、勤労者世帯の可処分所得が年額で53万円減り、全世帯の消費支出は年額で42万円減っています。
消費の中身の変化について、同じように2000年から2016年までの間の2人以上の全世帯の月額で見てみます。すると、いわゆる衣食住の「衣」ではマイナス5,093円(マイナス32.1%)、「食」はマイナス2,087円(マイナス3.9%)、「住」はマイナス4,506円(マイナス17.9%)です。食べることだけは節約のしようがないということかもしれません。「こづかい、交際費」関連はマイナス23,492円(マイナス33.2%)、「教育、娯楽」関連はマイナス10,191円(マイナス18.4%)となっています。
「衣」と「住」が大きく減少する中、ユニクロやニトリが販売を伸ばしていることを見れば、どのような消費傾向にあるのか見えてくるようです。

「こづかい、交際費」や「教育、娯楽」の落ち込みは、正に将来に大きく影響を与えるものです。自己実現のための様々な投資に関するものがマイナスになっていくということは、将来が危ういとまでは言いませんが、寂しいという感じではあります。

こうした論点を寺島先生は指摘されています。まさしく、消費が伸びない、あるいは所得が伸びない景気拡大という点に、日本経済の様々な課題が凝縮しているように思います。