皆さんがいろいろな統計を見る場合、平均値に注目する場合が多いと思います。例えば、学校のテストでは、平均点を取っていればまずは安心します。つまり、成績や調査結果などの統計値が、ある程度ばらついている場合には、平均値が全体を代表します。年平均気温や年平均降水量などは、その年の気候の状況を代表する値としてよく使われており、「今年の夏は昨年より暑かった」、「雨が多かった」など話題にあがります。
しかし、平均値が万能というわけではありません。私は統計を見る時に、平均値だけで評価しないように注意しています。

例えば、毎年、厚生労働省では「国民生活基礎調査」を行い、世帯別の年間所得金額を公表していますが、平成26年の調査結果を見ると、全世帯の平均所得は541万9千円となっています。これは1人暮らしの若者世帯や単身の高齢者世帯を含む全ての平均です。しかし、この数値が国民の所得を代表しているかというとちょっと待てよ、ということになります。
実は、国民の多くの世帯はこの平均所得を得ているわけではないのです。なぜなら、1,000万円以上など高額の所得を得ている少数の世帯が平均値を引き上げているからです。

このような時には、平均値ではなく、中央値や最頻値で見比べる必要があります。中央値とは、統計全体を順番に並べた時に真ん中に来る値のことです。先ほどの厚生労働省調査の世帯所得でいうと、回答があった全国6,706世帯を、最も所得が少ない世帯から最も多い世帯まで並べた時に、真ん中(3,353番目と3,354番目)に当たる世帯の所得で、427万円が中央値となります。
また、最頻値とは、統計全体の中で出てくる頻度が最も多い値のことを言います。同調査の世帯所得でいうと、世帯数が最も多いのは200万円~300万円で全体の14%を占めていますので、最頻値はその範囲を代表する数値250万円となります。

世帯の所得を見る場合には、中央値や最頻値を重視することが肝要です。つまり、多くの世帯の年収は200万円から400万円程度であり、平均値の541万円ではない、平均値だけでは現実を捉えきれていないと言うことができます。
平均値も重要だが、本当に重要なことは何なのか、その数値は何を表しているのか、よく考えないと間違えてしまうことがあります。発表された結果や成果を示す数字が、本当に重要なことや核(コア)となる部分を表しているのかを見誤らないよう注意する必要があります。