2日間にわたって経済格差についての話をさせていただきました。今日は埼玉県の経済状況について見てみたいと思います。

まず6月1日(水曜日)に公表された「平成25年度県民経済計算」によれば、平成25年度の埼玉県の「一人当たり県民所得」の全国順位は19位でした。県内総生産(GDP)が5位であることを考えると、なぜそんなに低いのかと疑問を持たれる方も多いかと思います。

結論から言うと、埼玉県民の所得が低いということでは全くありません。
県民所得は給料や退職金などの「雇用者報酬」と会社や自営業の営業利益に当たる「企業所得」、それに利子や賃貸料に当たる「財産収入」の3つから成りますが、このうち「企業所得」は企業の所在地に計上されます。
埼玉県から東京都内には約84万人(平成22年)と、小さな県の総人口に匹敵するくらい多くの県民が通勤しています。
この都内に通勤する県民が生み出した価値のうち、給料として自らが受け取る部分は「雇用者報酬」として埼玉県の県民所得に計上されますが、企業に留保される部分は「企業所得」として東京都の都民所得に計上されることになります。
一方で、職場と住所が同じ県内で自己完結している地方の県では「雇用者報酬」も「企業所得」も同じ県に計上されます。
埼玉県の県民所得の順位が低く出るのはこのためで、決して県民一人一人の所得が低いわけではありません。やはり東京への通勤者が多い神奈川県を見ても16位、千葉県は12位という状況です。

したがって、県民一人一人の平均所得という意味では「一人当たり雇用者報酬」の全国順位を見るのが正しい見方だと言われております。
こちらの方は埼玉県は7位であります。1位が東京都、2位が大阪府、以下神奈川県、栃木県、奈良県、愛知県と続きます。

経済の伸びという点で、平成15年から25年までの県内総生産の増加額を見ると、愛知県が1位で埼玉県は2位、3位が三重県、4位が福岡県。東京都は実は最下位です。神奈川県も42位でともにマイナス成長です。埼玉県の勢いがよく分かるデータです。

同じ平成15年から25年の期間で、県内総生産の全国に占める各都道府県のシェアの増加ポイントで見ても、やはり愛知県が1位、埼玉県が2位、九州全体の富を集めていると言われている福岡県が3位となっています。神奈川県は、シェア自体は大きいのですが、この間のシェアはむしろ減少しています。東京都も同様でシェアを小さくしています。

日本の経済停滞を分析する上で「日本経済が成熟期に入った」と言われることがあります。
確かに、これまで見たデータからも、東京都や神奈川県のような、正に成熟した都県は、経済の規模は大きいものの「勢い」あるいは「伸びしろ」という面では難しいところがあるのかもしれません。
それに対して、埼玉県は規模では及ばないものの、「勢い」という点では元気な県と言えるのかもしれません。