「日経ビジネス(10月12日号)」で、企業のユニークな採用方法が取り上げられていました。大阪市に本社を置くi-plug(アイプラグ)が提供する「オファーボックス」という新卒採用支援サービスです。このサービスが、優秀な人材を確保したい企業のニーズをつかんでいるようです。

 この「オファーボックス」では、まず学生が自己紹介や専門分野、スキルなどのアピールポイントを2000字以内で書いてサイトに登録します。企業はこれを読み、会いたいと思った学生にオファーを出して面接などを行います。企業は学生からの応募を待つのではなく、社会人のヘッドハンティングに近い手法で、欲しい人材を狙って「一本釣り」するわけです。

 不特定多数の学生を大量募集する従来の採用方法では、高いスキルを持つ個性的な人材を探し出すことは難しいのが実情です。一方、このサービスでは学生の登録ページを企業が検索し、求める人材を探し出すことが可能です。
 例えば、ある企業では「失敗」というキーワードで検索するそうです。その理由は「失敗を糧に成長できた人材は強いから」だそうです。また、その企業は泥臭い営業に向く人材を求めているのですが、一般募集では商品開発やマーケティングの希望者が多いそうです。こうしたミスマッチが存在する中で、このサービスによって「こちらから声を掛けなければ目を向けてくれなかった学生を口説きにいけることが他のサービスにない良い点」と同社の採用担当者はコメントしています。

 一般的な新卒募集サイトでは、目立つ場所、すなわち高い広告料を支払うことのできる大手企業が有利です。一方、このサービスでは、大手企業もベンチャー企業も関係なく、企業が学生を直接口説きにいけるスタイルなので、知名度の低い企業にもチャンスがあるようです。正に、学生と企業の双方が納得できる就職活動の環境づくりのように思いました。

 本質を見抜き、ヘッドハンティングという手法を新たな分野で生かした典型的な成功事例と言えるかもしれません。「なるほど」と唸(うな)らせる新しいビジネスだと思います。