農業に従事している男性は、従事していない男性よりも寿命が8歳長いという調査結果が発表されました。
この調査は、早稲田大学の堀口健治(ほりぐち けんじ)名誉教授と弦間正彦(げんま まさひこ)教授が、同大本庄キャンパスのある本庄市の住民を対象に行ったものです。
堀口名誉教授らは、まず、埼玉県後期高齢者医療広域連合の協力を得て、本庄市の後期高齢者(75歳以上の人)の年間医療費を、専業・兼業農家とそれ以外に区分して分析しました。すると、平成26年度の一人当たり年間医療費は、専業・兼業農家が73万1000円であるのに対して、それ以外が91万円となり、専業・兼業農家の医療費の方が2割程度少ないと分かりました。専業・兼業農家の医療費が少ないという傾向は、調査を始めた平成22年度以降同様に見られたそうです。
次に、本庄市内の農協組合員543世帯と非組合員300世帯からアンケート調査の回答を得ました。すると、平成元年以降に亡くなった専業・兼業農家の男性274人の平均死亡年齢は81.5歳で、それ以外の男性183人の73.3歳より8歳高かったそうです。なお、女性の場合は専業・兼業農家が84.1歳、それ以外が82.5歳と大きな差はありませんでした。
厚生労働省では、都道府県別の死亡率や一人当たり年間医療費を公表しています。死亡率や医療費に差が生じる要因には、運動など活動の状況、食事内容、健康に対する意識、受診行動、生活習慣など個人に関わるものに加え、気候や気温、医療供給体制など様々あります。そのため、結果の違いを特定の要因に絞って説明することは難しいと言われています。
しかし、今回の堀口名誉教授らの調査は、本庄市という限られた地域で実施しているため、気候や気温、医療供給体制など地域に帰属する要因が同じ条件です。そのような状況において分析した結果、農業従事者の健康上の優位性が具体的な数値で証明されたことは大変意義があります。
農家男性の寿命が長いというのであれば、農業を趣味とすることも長寿につながるかもしれません。趣味としての農業が健康長寿につながるのであれば、楽しく、おいしく、長生きという一石三鳥が実現できます。農山村への移住や交流にも追い風となります。堀口名誉教授らは、今後、医師の協力を得てさらに詳しい調査を進めるそうです。農家男性の健康長寿の解明に注目しましょう。