IMF(国際通貨基金)が3か月おきに発表する世界経済の見通しの7月版から実質GDP成長率の数字を見てみました。イギリスのEU離脱がもたらすリスクを考慮し、これまでの見通しが下方修正されています。
まず、2016年の世界全体の実質GDP成長率の見通しは3.1%と予測されています。1月版で示した3.4%という予測が4月版では3.2%に下方修正されていましたが、それが今回更に下方修正されたことになります。2017年の成長率見通しも4月版で示した3.5%から3.4%へとわずかですが下方修正されました。

国・地域別で見てみますと、まずアメリカの2016年の実質GDP成長率見通しは2.2%と予測されています。こちらも1月版の2.6%、4月版の2.4%から更に下方修正されました。2017年の成長率見通しは2.5%と、こちらは今回は下方修正されず、先進国の中では最も高い成長率が予測されています。

ユーロ圏の2016年の実質GDP成長率の見通しは、1月版の1.7%、4月版の1.5%という予測から今回は1.6%へと下方修正されましたが、意外に小幅な印象です。2017年は1.4%成長が予測されています。

日本はどうかと言いますと、2016年の実質GDP成長率の見通しは0.3%、2017年の成長率の見通しは、更に低空飛行の0.1%と予測されています。まず、この成長率の水準そのものが先進国の中で最も低いということになります。
更に1月版からの下方修正幅が、EU離脱リスクに直面するイギリス(2016年成長率最新予測値1.7%、1月時2.2%からマイナス0.5ポイント)やユーロ圏(2016年成長率最新予測値1.6%、1月時1.7%からマイナス0.1ポイント)に比べ、マイナス0.7ポイント(2016年成長率最新予測値0.3%、1月時1.0%)と大幅であることに注意が必要です。

このように他の国々と比較して見ていくと、実体経済におけるアベノミクスの効果というものが果たしてどうなのかということになります。

BRICsの実質GDP成長率見通しを見てみますと、リオオリンピックのご当地ブラジルが、2016年の最新予測値でマイナス3.3%、2017年にはプラス成長に転じそうで0.5%。ロシアが2016年の最新予測値でマイナス1.2%、2017年はプラスの1.0%。インドは好調です。2016年、2017年とも7.5%前後の成長率が見込まれています。中国は徐々にですが成長が鈍化しているようです。2016年と2017年の最新予測値はそれぞれ6.6%、6.2%です。

ASEANが伸びてくるように思えます。ASEAN5(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)の実質GDP成長率は、2016最新予測値は4.8%、2017年は5.1%成長が見込まれています。

いずれにしても、先進国がまずまず、BRICsやASEANが2017年はプラスを維持又はプラス成長に転じようとする中、どうも日本はプラスとは言ってもほとんどゼロに近いプラスという状況です。
そこで大型の経済対策が取られたようです。ただ、私の目から見ると28兆円と数字そのものは大きいのですが、財政投融資や政府保証でふくらんでおり、実際の財政支出である真水となるとそうでもないような感じも無きにしも非ずといったところです。