オリンピック・パラリンピックの開催により、その効果を大会終了後も開催都市や開催国に残します。やがてレガシー(遺産)となった効果は長期にわたり社会に良い影響を与えます。これは国際オリンピック委員会(IOC)がオリンピック憲章に掲げる理念の一つです。

戦後復興から高度経済成長に至る一つのピークとして開催された1964年東京オリンピック。前回大会のレガシーと言えば、新幹線や首都高速道路、JリーグやV リーグの前身となる実業団の日本リーグなどが思い浮かびます。

解体された国立競技場も実は前回大会のレガシーの一つです。同競技場の聖火台は川口市の鋳物師(いもじ)・鈴木萬之助(すずき まんのすけ)さん、文吾(ぶんご)さん親子が鋳造したものです。高さと直径が約2.1メートル、重量は約2.6トンもあります。同競技場のシンボルともいえる聖火台は川口鋳物の名声と職人の誇りを示すシンボルでもあります。今も川口市民の大きな誇りになっています。

同競技場の解体に当たり、この聖火台が宮城県石巻市に貸し出され、その除幕式が6月27日、同市総合運動公園で行われました。陸上男子ハンマー投げの室伏広治(むろふし こうじ)選手の手で再び点火された聖火台に、東日本大震災からの復興のシンボルとしての役割が新たに加わりました。

5年後に迫ってきた2020年東京オリンピック・パラリンピックは、前回大会開催時とは異なり、我が国が超少子高齢社会を迎えた中での開催となります。このほかにも東日本大震災からの復興、環境・エネルギー問題への対応などに世界中の目が注がれる大会となることでしょう。埼玉県でもオリンピックでバスケットボール、サッカー、ゴルフ、射撃の4競技、パラリンピックで射撃の1競技の開催が予定されますが、これらの課題を解決し、レガシーとなる可能性を秘めた取組も一部で始まっています。

例えば、炎天下での開催が予想されることから、環境省は雨水や地下水を活用した暑さ対策の調査実証事業を、全国5か所で今年度からスタートさせています。そのうちの一つ、熊谷市役所前のバス停では、炎天下でひさしもない中でバスを待つ人が涼しく感じる仕掛けを検討しているそうです。

これから埼玉県も多くの県民、民間企業の皆さん、そして国とも協力しながら、埼玉レガシーの創出に知恵を絞っていかなければなりません。