埼玉県では平成20年度から「みどりと川の再生」を展開しています。そのうち「みどりの再生」については、県民の皆様に納めていただいている自動車税(年間約860億円)の1.5%相当額(年間約13億円)、車1台当たりに換算して500円ほどになりますが、これを一旦「彩の国みどりの基金」に積み立て、そして埼玉県の「みどりの再生」に全面的に活用しております。

私が知事に就任した平成15年9月以前の30年間で失われた埼玉県内の平地林は、約6,500ヘクタールありました。6,500ヘクタールと言われてもピンとこないかと思いますが、これは東松山市の面積とほぼ同じ、JR山手線の内側の面積に匹敵する緑を失ったことになります。そこで、この30年間に失われた緑を8年で取り戻すプロジェクトとして始めたのが「みどりの再生事業」です。そのためには毎年14億円ほどの費用が掛かると試算されたことから「彩の国みどりの基金」を創設し、事業を展開するようにしました。

中山間地域で生活をされる方々は、荒廃した山がきれいになったり、あるいは山道を走っていると樹木が切り出されたままになっていたところが、改めて植林されたりする様子を御覧になっているために、この「みどりの再生事業」について御理解いただき、感謝の声もいただいているところです。しかし、都市部で生活されている皆様にとっては、どの緑が増えたのかなといった感じで、必ずしも見えやすいものになっていません。

一方、「川の再生事業」はどうやらよく見えるようです。多くの皆様から「最近、川がきれいになった」「アユが戻ってきた」「小魚が多くなった」そして「水辺がきれいになった」などの評価をいただいております。「川の再生事業」は、平成20年度から平成23年度までの4年間は「水辺再生100プラン」として、水辺の再生事業を展開しながら清流を取り戻す運動を行ってきました。その結果、水辺周辺の堤防沿いの道などがきれいになり、川に親しめる環境が整ってきました。そして平成24年度からは「川のまるごと再生プロジェクト」として、川の上流から下流まで複数の市町村にまたがった本格的な再生事業を行うことで、更に「川の再生」が加速してきたところです。ちなみに平成15年度には埼玉県の「アユが棲(す)める水質の河川の割合」は52%だったのですが、平成26年度には何と84%まで跳ね上げることが出来ました。正にアユのいる清流に徐々に近づいているところです。

行政の仕事の成果はこのようによく見えるものと見えないものがあります。県民の皆様にその成果に納得していただけるように、できるだけ成果を見えるものにしたいと思っています。