埼玉県の推計人口は725万人となり、人口はまだ増加しています。しかし県内の市町村では既に人口が減少しているところもあります。人口が減少して人口密度が低くなると、バスの採算性が厳しくなりますが、地域にとってバスは極めて重要な交通手段です。

本県には地域で営業しているバス会社がたくさんありますが、小江戸川越の市内を巡回するレトロなボンネットバスで有名なイーグルバス(株)もその一つです。通常の市内の路線バスの運転士さんがバスガイド顔負けの観光案内までしてくれるので、それを楽しみに乗車する観光客も増えるなど、観光振興に一役買っています。

実は、私は以前このイーグルバス(株)を「とことん訪問」させていただいたのですが、その時お会いした社長の谷島賢(やじま まさる)さんはアイディアにあふれた方で、ITの活用にも積極的に取り組んでおられます。
例えば、イーグルバス(株)では、一部の路線でバスの乗降口にセンサーを取り付けて「どの停留所で、何時に、何人が乗降するか」のデータを収集し、利用率の悪い時間帯などをあぶり出して、時刻表やルートを適切に調整する手法で減少していた利用者を増加させているそうです。

また、同社がバス事業を行っている東秩父村では、現在、観光施設のそばに「ハブバス停留所」(乗り継ぎの中心地となるバス停)をつくり、村営バスの路線との乗り継ぎを向上させる計画を進めているそうです。
もともと東秩父村は山歩きが盛んな地域で、元気な高齢者も多く訪れます。山歩きの観光客は駅から登山口までバスに乗りますので、生活路線のバスを観光客も利用できるように運行することで、バス路線の赤字解消の一助となっているそうです。

駅が近くにない高齢者にとってバスは大切な交通手段です。バスが便利に利用できれば、高齢者も出かけやすくなります。外に出るというのは高齢者の健康につながります。そして健康であれば地域の担い手として活躍できます。地域の担い手が多ければ多いほどその地域は活性化されます。

イーグルバス(株)の取組は、バスが健康長寿の高齢者をつくり、そしてまちづくり、村おこしにつながる一つのモデルケースになることが期待されます。