12月3日(日曜日)の毎日新聞に、元岩手県知事で元総務大臣の増田 寛也(ますだ ひろや)さんの「深刻な所有者不明土地」という寄稿文が掲載されていました。これに先立ち、増田さんは10月26日(木曜日)に所有者不明土地問題研究会の座長という立場で発表をされています。

発表の要旨は、「国土の約2割の土地が所有者不明で、その面積は九州の面積に相当する。このまま増加すれば、2040年には約720万ヘクタールとなり北海道の面積約780万ヘクタールに近づく。また、所有者不明土地による経済的損失は、2017年から2040年の累積で約6兆円に及ぶ。」というものです。

しかしながら、私に言わせると極めてオーバーな表現が使われていると感じます。なぜ、23年間の累積を出してわざわざ6兆円という数字を出すのか。なぜ、わざわざ23年後の推計値を出して北海道の面積に近づくというのか。物事を深刻化させて警鐘を鳴らすという手法をとっておられるのかもしれませんが、いたずらに事実関係を不明にする可能性があるので、あえて反論したいと思っています。

そもそも、研究会のいう所有者不明土地とは、所有者台帳いわゆる不動産登記簿などによって所有者が直ちに判明しない、または判明しても所有者に連絡がつかない土地であることを意味します。全く不明というわけではないのです。

平成28年度に地籍調査が実施された563区市町村の約62万筆のうち、登記簿上で所有者が確認できるのは79.9パーセント。つまり、登記簿のみで所有者が不明なのは20.1パーセントです。しかし、20.1パーセントのうち19.7パーセントは、住民票などを使って調べると所有者が確認できます。最終的に所有者が不明なのは0.4パーセントに過ぎません。99.6パーセントの土地は、所有者が分かるということになります。要するに、住民票で所有者が判明し課税をされており、所有者が誰かを税務当局が押さえています。埼玉県の場合、登記簿上で所有者を確認できるのは97.0パーセント、住民票等で2.6パーセント、合わせて99.6パーセントは所有者が確認できます。

土地の所有権登記が正確になされることを望むところではありますが、やはりこれは所有者不明ではなく、きちんと登記がされていない土地があると言うべきです。私は、あおるようなやり方で国民に不安を与えるのではなくて、事実をしっかりと認識していただいた上で対策を練るべきだと思っています。