今年の7月は、福岡県・大分県境での集中豪雨の大被害に加えて、秋田県でも集中豪雨の被害がありました。
昨年は埼玉県でも狭山市や入間市での不老川(ふろうがわ)の氾濫、一昨年は越谷市での新方川(にいがたがわ)の氾濫などがありましたが、幸い死者はありませんでした。最近の集中豪雨は、いつどこで何が起こるか分からないという状況になっています。

埼玉県は昭和22年9月にカスリーン台風という大型台風に襲われ、当時の北埼玉郡東村(現加須市)で利根川が350メートルに渡り決壊して大氾濫を起こしました。当時の被害額は70億円(現在の価値で約1,000億円)、浸水域内の人口は60万人と言われています。もし今日、同じような災害が起こった場合の被害額は約34兆円、浸水域内の人口は230万人と推定されています。

カスリーン台風で氾濫した利根川の水は5日後に東京に到達したと言われています。当時は水田も多く、多くの道路が舗装されていなかったこともあり、あふれ出た水はゆっくりと移動していったと考えられます。しかしながら現在は水田が大幅に減ったこと、また道路がほとんどアスファルトで覆われていることなどから、もっと早いスピードで東京都内にたどり着くのではないかと危惧されています。
当時の人々は、戦争など困難な時代であったが故に河川の整備を十分行うことができなかった、つまり、怠っていたためにこのような悲惨な出来事になったと考え、「後世の人々にはこんなことがないように」と戒めの石碑を建てています。石碑は今も決壊口の付近にあるカスリーン公園(加須市)の一角に屹然(きつぜん)とそびえています。

自然の猛威を完全に防ぐことはできませんが、少なくとも過去に起こったレベルの災害については防ぐというのがハード面の鉄則です。同時に、それ以上のことが起こった時の備えとして考えておかなければならないのは、情報の正確な伝達によって適切な避難行動をとっていただくといったソフト面の対策です。

カスリーン台風から70年となる今年、改めて洪水の恐ろしさとその対策について、しっかりと考えていきたいと思います。